2016 年 2016 巻 BI-004 号 p. 04-
欧州や本邦では,金融緩和策の一環として,マイナス金利政策が採られている.当該政策は,銀行の貸出金金利の低下を通じた貸出の増加・資金需要の拡大のメリットが主張される一方,超過準備へのマイナス金利適用による民間金融機関の負担増や余資運用の困難さを懸念する論調もある.本稿では,金融機関の余資運用におけるリスク投資拡大に注目する.著者らは金融機関が保有する市場性資産の価格変動による財務状況の変化を通じた連動的な破綻のエージェント・モデルを提案している.市場のマクロ的ショックを扱う当該モデルを拡張し,金融機関の余資運用にかかる意思決定を記述する.その上で,市場性資産の価格下落が生じた場合に,金融システムへどのような影響が生じるか分析を行う.