2019 年 2019 巻 SAI-034 号 p. 04-
企業や家計などの経済主体の活動は,様々なメカニズムにより,相互に影響を与えていく.そのため,先行的な活動をとらえた経済統計には,先行きの経済の動きを示唆する情報が含まれると考えられる.本研究では,内閣府景気動向指数の先行指数の算出に採用される11の先行系列を用いて,各種機械学習手法を用いた短期経済予測モデルを構築し,その予測特性の検証を行った.その結果,ディープラーニング手法の一種であり再帰的なネットワーク構造を持つRNN(リカレントネットワークニューラルネットワーク)において,相対的に高い予測精度が確認できた.また,RNNベースの予測モデルの構築の際,景気動向指数の先行指数のみを学習に用いた場合に比べて,先行系列11系列を学習に用いた場合,先行きの経済予測の精度に改善の傾向が見られた.このことは,経済的に先行性を持つと解釈される複数の系列の情報を,RNNを用いて直接モデル化することで,先行きの経済予測に関して有用な情報の抽出が可能となることを示唆する結果と言えよう.