2021 年 2021 巻 CCI-008 号 p. 06-
広域複合的な自然災害やコロナ感染症危機に直面する今日,それらの危機を管理して,地域コミュニティの暮らしを守るためには,パブリックセクター,プライベートセクター,ソーシャルセクターの垣根を超えて,それらの役割を兼有できる組織が必要である.地域型の複合企業−地域コーポレーション−は,各セクターそれぞれに生じる複合的なニーズに応えるビジネスモデルを立案して実施し,それらの成果を中長期的に統合する機能を有する.地域コーポレーションを体現するグリーンファンドグループは,アドボカシー,エネルギービジネス,市民啓発活動を実施し,石狩市におけるコミュニティウィンドファームを含む31基の風力発電事業を推進している.その成功要因には,(1)社会変革ビジネスモデル(加藤 : 2017b),(2)非営利活動と営利事業を併有する経営形態(加藤 : 2017a),(3)政策形成と地域ビジネスの統合機能(加藤 :2021),(4)セクターを横断するネットワーク(加藤 : 2021b)がある.地域コーポレーションは,特有のネットワークを形成し,関係する個人,企業,自治体,地域社会に,協働の場(platform)から生まれるプロダクツとサービスを提供し,同時に,彼らの日常的なニーズに応答することによって信頼関係を構築する.このような地域コーポレーションが有するネットワークの特性(特徴,成立条件,役割の各項目)を,ハイブリッド組織の価値創造アプローチ(Jan-Erik Johanson, Jarmo Vakkuri : 2021)の3つの特徴−価値の混合(Mixing),妥協(Compromising),正当化(Legitimating)−と対照した結果,地域コーポレーションは,それらの概念を分有しているが,時系列に並ぶことはなく,複数のセクターの要素が重なり合う領域に,複数の要素を包含して出現していることがわかった.このロジティクスの中心に「信頼醸成メカニズム」がある.