2022 年 2022 巻 SWO-056 号 p. 13-
高齢者の転倒は予防可能であるにも関わらず,これほど大きな社会課題になっている原因の1つは,科学的な予防アプローチが実践されていない点にある.傷害予防の分野では,科学的な傷害予防アプローチとして,教育,環境改善,法制化の3つが有効であるとされ,その中でも環境改善を優先的に取り組むことが推奨されている.そこで本研究では,高齢者の転倒という複雑な日常生活現象を,環境改善につながる変数を含めて記述し,計算可能にする方法論を検討する.具体的には,東京消防庁から提供された高齢者の救急搬送データを用いて,ノードとして記述すべき項目を検討し,実際の救急搬送事例に基づいた知識グラフの作成について述べる.また,作成した知識グラフを用いた類似度計算やクラスタリング分析を紹介する.最後に,知識グラフを活用した今後の展開について議論する.