2024 年 2024 巻 FIN-033 号 p. 68-75
本研究では、Chen et.al (2022) の手法に基づいて、日本企業の財務データを用いて、機械学習手法による次期利益の変化方向の予測可能性を検証する。先行研究では、米国市場において機械学習手法がアナリスト予測を上回る予測パフォーマンスを示しているが、本研究ではこの知見の日本市場への適用可能性を探る。本研究では、先行研究同様に機械学習手法として非線形性および相互作用を捉えることのできる決定木系のアルゴリズムを適用し、予測モデルを構築する。予測パフォーマンスの評価には、ROC曲線化面積と、予測に基づくヘッジ・ポートフォリオの異常リターンを用いる。また、ロジスティック回帰モデルや経営者予想との比較を行い、機械学習手法の優位性を検証する。本研究の貢献は、(1)機械学習手法が捉える利益予測における財務情報の非線形性・相互作用の解明、(2)日本市場での会計情報の利益に対する予測力の再評価、(3)効率的市場仮説に対する実証的証拠の提示、の3点にある。これらの知見は、会計情報の役割に関する理論的な理解を深め、日本市場の投資実務や企業価値評価に新たな視座を提供する。