主催: 人工知能学会
会議名: 第100回言語・音声理解と対話処理研究会
回次: 100
開催地: 国立国語研究所 講堂
開催日: 2024/02/29 - 2024/03/01
p. 148-153
さまざまな専門職・専門教育でのスーパーバイズは傾聴と類似しているものの,スーパーバイザーは聞き取りを通じて仮説の形成と修正を行い,それに基づく解決策の提示に志向しているため,「仮説を形成・確証するのに不足している情報」を質問していくことが中心的になる.1980年代のエキスパートシステムは専門家の診断をAIで代行しようとするものだったが,成功を収めたとは言えない.実際のスーパーバイズのプロセスの丹念な記述は古典的Aiのどこに限界があったかを明らかにできる.形成される仮説はプロダクションルールの束ではなく,複数のスロットを持つフレーム構造に近いであろう.しかし,古典的フレームで各フレームを構成するスロットが既定であったのとは異なり,複雑な個別事例に対処できるスーパーバイザーによる仮説形成ではスロット自体が動的に発見されなければならず,この点がスキルの属人性と継承の困難さの原因の一つであった.