抄録
細胞を一成分とするハイブリッド型医用材料を開発するにあたって、細胞の粘着、増殖、活性化を制御することが重要なポイントとなる。本報告では、細胞増殖のよいマトリックス材料であるフィブリンに着目し、種々の人工材料上にフィブリンを形成させ、その表面上でのマウス線維芽細胞(L細胞)の粘着と増殖を検討した。また種々の材料上に形成したフィブリン線維を走査型電子顕微鏡(SEM)によって解析した。その結果、材料表面に吸着したフィブリン(フィブリノゲン)と材料表面に形成したフィブリン線維では細胞の応答(粘着・増殖)が異表なることがわかった。また疎水的なポリスチレンと親水的なガラス表面上に形成したフィブリンに対する細胞の応答が異なっていたことより、材料の性質の違いがフィブリンの構造を変化させることが示唆された。またスルホン化ポリスチレン表面上に形成したフィブリン線維のSEM観察は、それを支持するものであった。