抄録
リンパ球, B細胞とT細胞の分離を目的とし, タンパク質モデルとしての合成ポリペプチドを一成分とする多相系材料を合成して, 両者の分離能を, ポリペプチドの立体構造ならびにポリペプチド集合体のミクロドメイン構造に着目して解析した。その結果, 主に右巻きα-ヘリックス構造をとるポリ(γ-ベンジル-L-グルタメート)(PBLG)において, T細胞の粘着性に対するB細胞の粘着性, すなわちB細胞の選択性が1.6倍という値を得た。不規則構造のPBG(DL)では選択性は低下した。一方, ミクロドメイン構造を有するPBLG-ポリスチレングラフトコポリマーを用いると, B細胞に対する選択性は向上し, T細胞の2.2倍という値を得た。合成ポリペプチドを一成分とする多相系材料を用いることにより, 仔牛血清その他のタンパク質を共存させることなしに, リンパ球B・T両細胞を分離・精製しうる可能性が示唆された。