1983 年 12 巻 1 号 p. 166-169
小口径の動脈(口径4mm以下)および静脈系に置換し得る人工血管の開発を目的として、われわれの施設において研究をおこなっているPVA-SiO2複合体を既存の人工血管に塗布し、これを犬腹部大動脈に移植した。その結果、1年以上の長期開存例は、コントール(I群) 2/7。PVA-SiO2塗布(II群) 4/7。含ヘパリンPVA-SiO2塗布(III群) 8/12。摘出後にその表面を肉眼及び光顕で縣すると、II・III群では、I群に比べて吻合部の組織の過剰形成もなく、又仮性内膜も菲薄であった。走査型電顕では、I群の全表面はほぼ完成された内皮細胞が覆っている。II群では中枢・末梢に内皮細胞の形成ををみるが、中央にフィブリ線維で覆われた部分がみられた。さらにIII群では、中枢・末梢共に内皮細胞は幼若で、中央には人工血管の露出している部分もみられた。以上より、PVA-SiO2複合体を塗布することにより、吻合部組織治癒は良好となり、中央部の内皮細胞の新生を遅延させるが仮性内膜は菲薄となった。