人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
Print ISSN : 0300-0818
ISSN-L : 0300-0818
ダイアライザーによる強膜炎の原因物質について
越川 昭三小暮 美津子前川 正信三村 信英中林 宣男太田 和夫
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 12 巻 5 号 p. 943-948

詳細
抄録
セルロース・アセテートを素材とするNAC型中空糸ダイアライザーの使用患者のうち, 約170名に強膜炎が発生した. 1名を除き視力障害は完全に治癒したが, 眼の疼痛・発赤は平均約2週間持続した. この強膜炎の原因物質を究明して次の結果を得た. ダイアライザーの個々の構成物質およびダイアライザー抽出物を, 家兎とイヌの静脈内に投与して眼症状の発現を検討したところ, ダイアライザー抽出物にのみ強膜炎の発生を認めた. この抽出物をセファデックスで分画し, 各分画につき眼症状の発現を検討すると, Fr. 5およびFr. 6にのみ強膜炎が発生した. Fr. 5およびFr. 6をIR, UV, NMRで分析した結果, いずれもcellulose acetate oligomerおよびurethane oligomerを含むことがわかった. そこでcellulose acetate oligomerとウレタン原料を反応させて新たに被疑物質を合成し, この抽出物を分画したところ, ダイアライザー抽出物と同様のFr. 5およびFr. 6を得, これらの分画を動物に投与することによって眼症状の発現を見た. 以上の結果から, 強膜炎の原因物質はcellulose acetate oligomerとurethane oligomerから構成され, ダイアライザー組立時にcellulose acetate oiigomerとウレタン材料とが反応して発生したものと推定される.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本人工臓器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top