抄録
含フッ素セグメント化ポリウレタンが新しい人工心臓ポンプ用材料として適しているか否かについて血液適合性, 耐久性, 成型加工性などの点から評価を行った。in-vitroの抗凝血性としては,Lee-White試験で67-91分という血液凝固時間を示した。人工心臓ポンプとしては, PVCペースト製ポンプ内面にコーティングすることが可能であり, 3回コーティングすれば十分な被膜強度を有することが判った。このポンプをヤギに40日間抗凝固剤非使用下で用いた結果では, 肉眼的にも走査電顕的にも血栓の形成は認められなかった。X線マイクロアナライザーによる分析でもカルシウムの沈着は検出されなかった。低流量の左心補助心臓に用いた結果でもーケ所を除き血栓の付着はほとんど見られなかった。
以上の結果, 含フッ素セグメント化ポリウレタンは, 新しい人工心臓用材料として非常に有望であり, 今後より長期の評価が望まれた。