抄録
臼蓋形成不全を伴う変形性股関節症に対してセメントレス人工関節を挿入した際、術後にしばしばソケットの移動がみられる。そこで、これを防止する理想的な人工臼蓋の角度をコンピューターシュミレーションにより検討した。方法は川井により開発された「剛体-バネモデル」を用いた離散化極限解析法により行なった。シュミレーションの条件として、(1)臼蓋形成不全のない場合、(2)臼蓋形成不全があり、スパイクが骨盤腔内へ突出しない場台、(3)臼蓋形成不全があり、スパイクが骨盤腔内へ突出している場合である。その結果、最も人工臼蓋が安定する開外角は、臼蓋形成不全がない場合は、35度、臼蓋形成不全がある場合には40、45度であった。しかしその安定性は前者に比べて劣り、結果的には、開外角35度で挿入し、臼蓋底とソケットの間隙には十分な骨移植を行うことが術後の人工臼蓋の安定化に最もよい方注であることがわかった。