抄録
今日, 人工血管は大血管の再建手術に広く用いられているが, 再建移植症例の遠隔予後と社会復帰の状況を検討するため, 主として大動脈瘤手術例について外来受診, アンケートにて調査した。人工血管障害は人工血管劣化例はなく, 吻合部障害例が少ないが認められ, 器質化治癒の一層良好な人工血管開発と防止補強手段の必要性が認められた。合併臓器障害や手術併発障害については高令者で全身臓器障害を伴ないやすいため, 術前後の管理が主要であるが, 手術早期成績の向上とともに遠隔時におけるこれらの障害の軽減も認められた。高令者が対象となるため大血管に対する人工血管移植例の社会復帰にはこれらの問題点があるが, 手術成績の向上とともに社会復帰を考慮した管理の重要性が今後とも強調的段階となりつつある。