抄録
血行再建術の主目的の1つは患者の速やかな社会復帰を図ることにある。1975年1月から1983年12月までの期間に, 名古屋大学分院外科において278名が, 閉塞性動脈硬化症, Buerger病, 腹部大動脈瘤のために, 下肢の血行再建術をうけた(男250名, 女28名)。
手術死亡6例と晩期死亡(心筋梗塞, 脳血管障害, 癌など)29例があった。1984年9月の時点における患者の社会復帰の状態をアンケート調査および外来診察で確認しえた182名中の111名(61%)が筋肉労働, 事務的労働, 家事に従事していた。
下肢動脈慢性閉塞症や腹部大動脈瘤に対する血行再建術後の患者の社会復帰は, 64才以下の群と65才以上の群とで比較すると若年者群に有意に多くみられたが, 血行再建術の成否(グラフトの開存, 閉塞)や使用した移植血管の種類(ダクロン, 自家静脈)とは無関係であった。