1985 年 14 巻 2 号 p. 590-594
腹部外科手術を受けた613例中、多臓器不全(MOF)症例は42例(7%)であつた。90%に合併していた肝障害のうち、高ヒ血症や肝不全に対しては血漿交換(PE)や全血灌流法(DHP)に対処した。肝機能が、ほとんど廃絶した症例でも合併症が無いと、生命および不全状態が維持可能であつた。しかし感染(28/42例)や出血(16/42例)が合併すると腎不全を必頭としたMOFに進展し予後が極めて悪くなり、従来のPEのみでは成積の向上は困難と考えられた。そこで出血例に対してFUT-175をPE時に抗凝固剤として導入臨床上有用なことを示した。エンドトキシン血症(Et)に対しポリミキシン固定化繊維材料(PMX-F)を開発した。PMX-Fはin vitroにてEt液の膿度を下げ、マウス致死率を著しぐ改善した。また実験的Et血症犬でも対象群の生存率12.5%に対し83%の成積を示した。またグラム陰性菌に抗菌性も有し、将来肝障害患者からのMOFへの進展阻止に他療法と合せ有望な材料と考えた。