抄録
胸部下行大動脈瘤手術に於る一時的バイパス法は簡便で有用な補助手段であるが, 手術時の出血制禦の為にはヘパリン非投与下でのバイパスが望ましい。我々は, セグメント化ポリウレタン(TM3)コーティングシャントチューブを新たにデサイン, 開発し, その抗血栓性とhemodynamic performanceを動物実験で検討した。雑種成犬10頭を用い, 全例ヘパリン非投与下に5時間の弓部大動脈-大腿動脈間バイパスを行なった。A群6頭は下行大動脈を完全遮断し, B群4頭は部分遮断とし, 50~200ml/minのバイパス流量で行なった。抗血栓性: B群の1例(バイパス流量50ml/min)にのみ中央部に少量の血栓をみたがその他のチューブ内面はclearで, 走査電顕による勧察でも血小板凝集やフィフリン網の形成はなかった血行動態: バイパス流量450ml/min(26ml/kg/min), 圧較差65mmHg, 尿量も良く保たれ良好なperformanceを示した。この結果を基に現在臨床応用を考慮中である。