抄録
エチレン-ビニルアルコール(EVA1)共重合体中に5-FUあるいはアドリアマイシンを含有させた制癌剤含有EVA1マトリックスを調製し、マトリックスからの制癌剤の放出性とその抗腫瘍効果を検討した。EVA1マトリックスからの制癌剤の放出には徐放性が認められた。また、単にエチレンとビニルアルコールのモノマー比を変えることによりマトリックスからの制癌剤の放出速度を容易に制御し得ることが確認された。さらに、EVA1マトリックスのエールリッヒ腹水癌マウスの腹腔内埋込みにより、担癌マウスの腹水癌による体重増加に対して抑制効果がみられた。また、マトリックス投与群では生存日数が有意に増加した。以上の結果、EVA1共重合体を制癌剤の局所投与材料として用いることにより、患部に対し効率的かつ持続的に制癌剤を放出、作用させることが期待された。