抄録
開心術後, IABPと血液透析治療を併せ施行した10例を報告した。IABPの装着は8例には術中に, 2例には第4, 第5病日に行あれた。体外循環離脱を目的としたものが5例であった。IABP作動時間は71~396時間, 平均152時間で9例は離脱可能であった。透析は術後3~17日, 平均9.3日に開始され, 平均15日間, 12回の透析が行われた。透析より離脱できたのは4例で, この4例が長期生存例となった。開心術後両治療の併用例はMOFの範中に入る症例で, LOSに対するIABPは極めて効果的であった。しかし透析治療中には消化管出血, 肺不全, 肝不全, 重症感染症などの合併症が高頻度に出現し, これらのMOFが直接死因となった。開心術後のMOFは非拍動流である体外循環と術中の合併症により発生したLOSと臓器循環不全に起因するが, この症候群に対する治療は十分な効果をあげておらず, その予防には臓器循環の改善に工夫が必要である。