抄録
1975年より1983年までに教室で施行した異種生体弁(Hancock弁31個, Carpentier-Edwards弁60個lonescu-Shiley弁6個)置換術89例(僧帽弁置換〔MVR〕68例, その他21例)の遠隔成績について検討した。病院死亡率は全症例で16.9%, MVR例で16.2%であった。手術生存74例中, 追跡可能の73例の平均5.9年, 最長9.5年, 累積追跡期間426.5 patient-year(pt-y)の遠隔追跡では, 生存65例, 晩期死8例(1.9% per pt-y)であった。病院死を含む5年, 9年生存率は全症例で76%±4.5%, 62%±8.8%で, MVR例でもほぼ同様であった。弁機能不全を10例(2.3% per pt-y)に認め, 7例はprimary tissue failue, 3例は感染性心内膜炎で, そのevent free rateは全症例で5年95%±2.6%, 9年76%±6.8%であり, MVR例でもほぼ同様であった。血栓塞栓症は10例(2.3% per pt-y)にみられた。以上生体弁のもつ諸問題を勘案した上で, 教室では原則として60歳以上の高齢者, 妊娠出産を希望する女性, 抗凝血療法が困難と思われる症例に生体弁を使用している。