抄録
日本の組織に外国人が参入する時に生まれる受け入れ担当者の外国人との協働に対する認知を明らかにし、それをその組織の規模との関係において学習論的視点から論考することが、本研究の目的である。対象となったのは、JETプログラム(The Japan Exchange and Teaching Programme)を通じ日本の地方自治体で働く外国人職員(CIR)の受け入れ担当者である。本研究では、質問紙調査法を用い、検証的因子分析が実施された。担当者の所属する組織が、大規模(県庁・政令指定都市の市役所)であるか、小規模(町村役場・人口10万人未満の市役所)であるかによって認知の構造がどのように違い、また同じなのかを比較検討した。その結果、共通するのは、職務遂行に関わる3つの構成概念が相互に強く連関して認知されることであった。大規模組織の担当者においては、組織がCIR活用の体制を整備することと、文化的違いに対する自己の準拠枠を再検討することとの間に特に強い関係があること、小規模組織の担当者においては、CIRの文化や言語を体系的に学ぶ、CIRと交流し会話の中で尋ねる、自己の準拠枠を再検討する、の3点が相互に連結して認知されること、が特有な認知として示された。異文化接触における協働に関する学習的課題が、組織と担当者のレベルで検討された。