抄録
体外循環血濃縮専用フィルターHemo-Concentrator®を用いSingle Pass Ultrafiltration (SPUF)(1回の濾過により得られた任意の濃縮血を直接送血する)により回路内希釈残血の濃縮・返血を試みた。対象はASD3例, MVR2例, CABG1例であった。1433±314mlの回路内残血から流量50~200ml/分, 陰圧300~400mmHgで700±163mlを限外濾過し, 股静脈から9.5±1.8分で直接送血した。1回の濾過でHtは24.2±2.6%から42.0±42%, TPは3.5±0.2g/dlから8.1±2.6g/dlに上昇した。血液生化学的検査では大分子量物質は億過に比例して濃縮され, 小分子量物質は変化なかった。この濃縮血の返血により患者のHtは約26%から32%に上昇した。同時期に施行された開心術で, 回路内希釈残血をそのまま送血したControl群6例と, SPUF群とを比較した。出血量ではSPUF群の方が少なかったが有意差はなかった。血液生化学検査でも両群間に有意差はなかった。SPUFにより体外循環終了直後から, 適切な濃度の血液を返血でき, 血液節約・ボリューム管理に有力な手段である。