抄録
血液浄化法が多様化するにつれ, それに用いられている各種性能指標の妥当性, 意義が少しずつ異なってきている。本研究では最も利用頻度の高いクリアランス, ふるい係数について使用上の問題点を明らかにすることを目的とした。クリアランスについては式中の濃度, 流量として血漿基準の値を用いるか, 全血基準の値を用いるかが問題となるが, 臨床データから得られた物質移動速度を求めたところU. N. については全血基準, クレアチニン, 尿酸については両者の中間に位置することが明らかとなった。また電解質の分離膜透過速度は拡散移動だけでなく電位差移動によっても強く影響を受けている。一方現在論文等で用いられているふるい係数はいずれもみかけの指標であって、流量条件や流動方式によって値が変化する。臨床データから膜自身の分離性能を表わす指標を求めることは不可能であるが, 学会レベルで評価基準を設けるか, 少くとも流量条件, 流動方式を明記すべきものと思われた。