抄録
胸壁腫瘍を摘出した欠損部の肋骨を補填する目的で, 残存肋骨との接合部にセラミック接合ピンを用いたプラスチック製人工肋骨を作製し, 犬に移植した。移植後12ヵ月の時点でX線写真で, 固定・接合状態を調べ, その後移植部位を摘出して, 肉眼的, 組織学的に観察したが, 固定・接合状態は良好であり, 移植されたセラミック, プラスチックの両材質ともに組織親和性は良好であった。次いで同様のデザインであり, 本体を超高分子ポリエチレンを用いた人工肋骨を, 甲状腺癌の胸壁転移症例である69才の女性の胸壁切除後に使用した。切除された第V, VI, VII肋骨の残存肋骨部に, 切除したものと同じ長さの人工肋骨を移植した。患者は, 手術後胸廓の変形もなく, 呼吸機能低下も来さず, 術後8ヵ月の現在良好の状態である。