人工臓器
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徐放性制癌剤複合体からの薬物滲透と壊死効果
嘉悦 勲吉田 勝浅野 雅春久保 長生嘉 多村孝一大川 智彦牧田 登之今井 強一真下 透湯浅 久子山中 英寿鈴木 慶二大屋 正尚
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1986 年 15 巻 1 号 p. 210-213

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抄録
制癌剤を〔Ala/Asp(OEt)〕n担体中に加圧―加熱溶融処理によって包含し、高密度・高剛性の性質をもつ1.6mm径の徐放性針状複合体を調製した。担体自体をウィスター系ラットの背中皮下、肝臓、腎臓および脳に埋入した場合、埋入から7日目でのin vivo分解率は各々100%、70%、100%および50%であった。この複合体からのシスプラチンのin vivo放出は、肝臓に埋入した時、埋入から4日目で見掛け上完結することが分った。シスプラチン複合体を背中皮下、腎臓、肝臓そして脳に埋入留置(7日)した時の組織壊死の範囲は21mm、18mm、14mmそして25mm径となった。一方、シスプラチン以外の制癌剤、例えばACNU、MMCおよびADM含有複合体を脳組織内に埋入(7日)した場合、これらの制癌剤の中で最大壊死はACNU含有系を用いた時に観察された(12mm径)。この場合、MMCおよびADMの各複合体による壊死範囲はいずれも28mm径でしかなかった。従って、脳に対する有効な壊死作用はACNUを用いた複合体系でのみ可能であると結論した。また、本研究で用いた複合体による壊死作用は、挿入から3日目でほぼ飽和状態を呈し、それ以後の壊死作用が著明でないことも判明した。
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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