人工臓器
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徐放性制癌剤複合体の脳腫瘍領域への適用
嘉悦 勲吉田 勝浅野 雅春久保 長生喜多村 孝一今井 強一真下 透湯浅 久子山中 英寿鈴木 慶二
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1986 年 15 巻 1 号 p. 214-217

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抄録
低温放射線重合法によってnonbiodegradable vinyl copolymer中に制癌剤を包含し、徐放性針状複合体(1.6mm径、5mm長)を調製した。cisplatinを含む複合体針をウイスター系ラットの腎臓に7日間にわたって埋入留置した時。制癌剤のin vivo累積放出量は仕込みの12%であった。この値は複合体針の埋入箇所の違いによって著明に異なった。例えば、cisplatinのin vivo累積放出量は皮下埋入に対し38%、肝臓埋入に対し21%そして脳埋入に対し7%を示した。一方、徐放性制癌剤による組織壊死範囲は制癌剤の種類によって著るしく異なり、例えば腎臓に対する壊死の場合、その作用はcisplatin>MMC>ADM>ACNU>5-FUの順に減少した。しかし、脳の場合、組織の壊死作用はACNUの方がcisplatinより顕著に有効であった。従って、組織の違いによっても、徐放性制癌剤の壊死作用が異なることが結論できた。これらの結果に基ずいて、ACNU含有複合体針を中心に脳腫瘍領域に適用を試みた。
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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