抄録
N社透析器使用により発生した眼障害の原因物質は, ヘミセルロース由来のアセチル化多糖類またはこれとウレタンの反応物と推定される。今回, 針葉樹パルプを原料とするセルロースアセテート(CA)を部分ケン化により脱アセチル化し, EtOH不溶部分を試料として点滴静注により生物学的活性を検討した。家ウサギでは, 用量依存性に虹彩・強膜炎様症状が出現した。雑種成犬においては, 同様の強膜充血に加え, 咳嗽・鼻汁・気道分泌増加などの呼吸器症状や, 大量投与時の血圧低下が認められた。点滴静注後5~15分をピークに一過性の白血球・血小板減少を生じ, 一例では高度の低酸素血症が出現した。13CNMR分析から, 今回針葉樹パルプ原料より抽出した物質は, 大場らがN社透析器より抽出分離した眼障害誘起物質と類似の基本構造を有する部分的アセチル化多糖類で, パルプ由来のキシランとセルロースを含むオリゴマーと推定された。