抄録
埋植物による腫瘍形成性の問題と関連して, 埋植物の大きさ, 動物の種類が埋植物の周囲に形成される線維性被膜の厚さにどのような影響を及ぼすかを検討し, さらに腫瘍形成との関連性について考察を加えた。一辺が5・10・15・20mmのシリコーンゴムシートをマウス, ハムスター, ラットの皮下に埋植し, 4週~12月の組織反応や被膜厚さを調べた。細胞性の組織反応は, 埋植物の大きさ, 動物の種類によってあまり差は認められなかったが, 被膜の厚さにはいろいろな違いが認められた。ラットでは埋植物の大きさの影響を最も強く受け, また最も厚い被膜を形成し, 埋植物に対する感受性が大きかった。ハムスターは大きさの影響も弱く, また薄い被膜を形成した。マウスは両者の中間で, 埋植物が大きくなると被膜も厚くなったが, ラットほど厚くはならなかった。このような結果は, ラット, マウス, ハムスターとなるにしたがって腫瘍が発生しにくくなることと一致しているように思われる。