抄録
埋植用材料の置かれる場としては, 外界と接しているために不利とされる気管壁にbioactiveな材料であるコラーゲン合成高分子複合体を埋植し, その創傷治癒過程を観察して, コラーゲン複合化の意味について検討した。雑種成犬の頸部気管に1×2cmの窓状欠損を作成し, コラーゲン複合化ポリプロピレンメッシュを補填した。埋植後1, 3, 6週後に摘出して光顕的, 電顕的に観察した。メッシュ部分の炎症が消褪すると共に結合組織が成熟し, 周辺から基底細胞が増殖して基底膜を形成し, その後に増殖してきた基底細胞が線毛上皮や線上皮に分化し, 6週間後にはメッシュ全体を正常な上皮層が被覆した。一方, 無処理のポリプロピレンメッシュ群では扁平上皮がメッシュの一部を被うに留まった。以上の結果から, 軟組織用埋植材料は単にinertなだけでなく, 間葉系細胞に対してbioresponsableな材料が必要であり, 真の組織親和性材料を得るための方向であろうと考えられた。