抄録
生体組織を主構築とし, ヘパリン徐放性の小口径代用血管の開発に成功し, 内径3mm管を用いて動物実験した結果, 開存率100%を得た。方法として, 成犬頚動脈を採取し, 0.01%フィシン処理後, 10%プロタミン水溶液を注入しつつ管腔を膨らませながら, 外側から1%グルタールアルデヒドで架橋した。次に1%ヘパリン液中で, 代用血管と結合したプロタミンとヘパリンとをイオン結合させた。体重10kg前後の成犬30頭の大腿動脈, 頚動脈に内径2.5~3mm, 長さ6cmの代用血管120本を植え込み, 植え込み直後より155日に至るまでの観察の結果, 全例が開存した。対照群のヘパリン化していない代用血管は全例1週間以内に閉塞した。ヘパリンは植え込み後2カ月で95%以上が徐放し, 45日目には内皮細胞の出現がみられた。ヘパリン完全徐放後は内皮細胞が内面を覆って天然の抗血栓性を代用血管内面に発揮させ得た。