1986 年 15 巻 1 号 p. 364-366
小口径代用血管の端側吻合部における内膜肥厚発生機序について, 血行動態の面から材料別に検討した. 雑犬30頭に腹部大動脈(端々)―腸骨動脈(端側)Bypassを行なやBiograft®22, EPTFE 3, Dacron 5例を移植した. 末梢端側吻合角度を30°, 90°, 150°とする事により吻合部Toe及びHeel方向への血流配分が異なる条件を得, 各々I群, II群, III群とした. 吻合部内膜肥厚は中枢側流量配分の過大なI群の4例及びII群1例にみられたがIII群にはみられなかった. 又, 血管造影では移植後20ヶ月で初めてToeに狭窄を認めた例があり, Boundary Layer Separationが吻合部内膜肥厚と密接に関係している事が明, らかになった. さらに長期観察が必須と思われた. 走査電顕では内膜肥厚を発生したToeの内皮細胞は配列が疎で細胞間に間隙がみられた. Rough Surface Materialは抗血栓性が不良なため早期血栓閉塞率が高く, 小口径代用血管として低血流量域には不適と考えられた.