抄録
Gore Texグラフトは比較的細い動脈再建で評価が高く, 現在多くの施設で使用されているが, 本グラフトを大動脈置換に用いた報告は少ない。われわれは, 過去3年1カ月の間に, 本グラフトによる腹部大動脈置換を9例に行い, 同一術者が同一手技, 同一適応で行った, 56例の非破裂性腹部大動脈瘤のwoven dacronグラフト置換群との間で, 手術侵襲や再建した下腸間膜動脈(IMA)の開存率について, 比較・検討した。その結果, Gore Tex群ではdacron群に比べ, その平均吻合数が多いのにも拘らず, 手術侵襲には有意の差を認めなかった。
また, 再建IMAでは, Gore Tex群が7例中7例で開存しており, dacron群の12例中3例開存に比べ, 有意に良好な開存率を示した。
観察期間が末だ3年1カ月と短期間で, さらに長期の慎重な観察が必要ではあるが, 分枝再建を要する腹部または胸部大動脈瘤や慢性大動脈閉塞では, 本グラフトによる大動脈置換は有用な方法と考える。