人工臓器
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長期体外式肺補助における高濃度酸素の障害
野上 俊光津野 恭司大津 哲郎江崎 公明斉藤 裕子橋口 清明竹下 次郎東 兼充山城 健一寺崎 秀則森岡 亨
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1986 年 15 巻 4 号 p. 1760-1764

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抄録
膜型人工肺を応用した長期の体外式肺補助(ECLA)を行なうさい, 人工肺への高濃度酸素使用による弊害が疑われた. そこでヤギ9頭を使い, 6頭には人工肺に100%酸素を使用し, 他の3頭には30%前後の酸素濃度を使用した. その結果100%酸素使用群では6頭中1頭にのみ7日間のECLAが可能であり, 残り5頭はECLA 6日目に死亡した. 血小板数はほとんどの例でECLA前値の50%以下であった. 一方, 30%酸素使用群では18, 23, 38日とはるかに長期間のECLAが実施でき, 全身状態もよく維持された. 血小板数もECLA 3日目からはECLA前値の50%以上に増えていった. 意識的に人工肺換気を純酸素で行なった時期に一致してsupersaturationによると考えられる気泡が人工肺内に出現した. ECLA中の人工肺に高濃度酸素を用いると, 酸素中毒や血液回路内の気泡形成を生じる可能性があるので, 酸素濃度は必要最小限度にするのがよい.
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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