人工臓器
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経口吸着
小出 桂三遠山 純子井上 昇越川 昭三秋沢 忠男高橋 健日高 三郎山根 至二中尾 正明小野 俊一上原 康夫西村 寧
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1987 年 16 巻 3 号 p. 1193-1198

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抄録

経口吸着療法は, 保存期に適用可能な非観血的血液浄化法として特徴的である。従って患者の年齢や病態等の制約が少なく適用が容易であり慢性疾患には適していると言える。われわれは, 慢性腎不全の進行を抑制する目的で, 球形の多孔性炭素微粒子からなる経口吸着剤(AST-120)を最高56ヶ月に亘って慢性腎不全患者に適用し検討を加えた。その結果, 血清クレアチニンの逆数を時間に対してプロットした時の直線の傾斜は緩やかとなり, また透析導入までの期間を対照症例と比較すると, AST-120内服群で透析導入の遅延がみられ, 結果として慢性腎不全の進行抑制効果が示された。臨床症状では, 嘔気, 嘔吐, 食欲不振等の自覚症状の出現頻度が減少した。また, 高速液体クロマトグラフィーにより血清を分析した際, 腎不全患者のみに認められる尿毒症ピーク2aの増加は抑えられていることが認められた。以上の成績より, この経口吸着療法は慢性腎不全に対して有用な血液浄化法であると考えている。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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