1987 年 16 巻 3 号 p. 1395-1398
結晶領域と非晶領域とから成るポリ(プロピレンオキシド)セグソント化ナイロン610の抗血栓性を検討した。in vitroに於いては, ウサギ多血小板血漿にCa2+を再添加して血栓形成反応をシミュレートすると共に, in vivoでは,ウサギ頸部動静脈間に形成したシャントの開存性を評価することによって, その抗血栓性を解析した。その結果, 特定のミクロ構造(微結晶厚:6.5nm・長周期:約12nm)を有するコポリマーが, 材料表面に吸着した血小板のエネルギー代謝を伴なった活性化を抑制することによって, 抗血栓性機能を発現することが明らかとなり, さらに, この抗血栓性が, Biomerに比べ極めて優れていることが示された。このことから, 結晶-非晶ミクロ構造を制御することにより, 優れた抗血栓性機能が分子設計され得ることが示唆された。