抄録
僧帽弁置換術(MVR)を行った44例を対象に, 人工弁機能の非観血的で新しい評価方法として, 超音波ドプラー法(UPD)を用いて運動負荷時の人工弁血流を検討, 以下の結論を得た。(1) MVRでの左室流入最大速度(VM)の絶対値と運動負荷に対する増加の様子はいつれもOMC術後と同程度であった。(2) 弁サイズの大きい弁では安静時VMは遅く, 運動負荷を行うとサイズの小さい弁とのVMの差は一層明瞭となった。(3) Duromedics (DM)弁のVMは, Ionescu-Shiley (IS)弁, Bjork-Shiley (BS)弁よりも速く, 運動負荷によりその傾向は一層明瞭となり, 人工弁圧較差が大なることが示唆された。(4) 左室駆出率(LVEF)とVMの運動負荷による変化をみると, ともに増加する群と, LVEFは増加せずVMだけが増加する群があり, 平均左室内周短縮速度(mean VCF)とVMの関係についても同様であった。(5) VMの値, 特に運動負荷による変化は人工弁機能を表す簡便かつ有用な指標となりうると考えられた。