抄録
動物の血管から得られた膠原線維及び弾性線維からなる天然のマトリックスを親水性架橋剤であるエポキシ化合物(PC)にて処理すると、細胞親和性が良好となる。これが生体内に医用材料として植え込まれると、細胞の分裂・増殖の足場として最大限に利用可能である。この架橋法を用いて小口径代用血管(PC血管)を作成し、動物植え込み実験を行った。植え込み後38日、52日及び71日目に試料を採取したが、植え込み時の柔軟性を保っていた。組織学的所見では、代用血管壁は明らかな内膜、中膜、外膜の三層構造を示した。中膜では膠原線維及び弾性線維に沿って平滑筋様細胞が並んでおり、その配列は血流の方向に対して輪状であった。この形態は、血管壁の平滑筋細胞の配列様式、即ち、内側輪状、外側縦走状と同様であった。このPC血管は壁の器官再構築が生じ、短期間の内に天然の血管と酷似した構造を示すようになることが観察された。