抄録
臨床用補助入工心臓(VAD)の開発上, 抗血栓性を含めたVADの特性が, そのシステムに与える影響は極めて大きい。そこで, 傾斜型ディスク弁(Björk-Shiley, BS-21ABP)をVADの人工弁として使用した場合の流体力学的特性を検討するために, 流れの可視化法による定量的解析法を用い, 人工弁とその周囲の流れについて, 特に低流量での流れに焦点をあて, 流体力学的解析を行なつた。その結果, 高流量では比較的均一となる人工弁の流速の分布が, 低流量では人工弁のmajor orifice側に流速の高い領域が偏在し, そのためminor orifice側では流速が極端に低下し, minor orificeとその下流域に血栓形成が起こり易い状況となっていることが明らかとなった。したがって, 血栓形成を防止する上で, 弁機種およびサイズに応じて一回拍出量をある値以上に維持することが, 実際のVADの駆動の際に必要であると判断された。