1990 年 19 巻 1 号 p. 265-269
冠循環に対する左心補助人工心臓(LVAD)の効果について, 成山羊8頭を用いた急性動物実験を行い検討を加えた。左房―下行大動脈間にLVADを装着し, 左前下行枝を結紮して急性心筋梗塞を作成した。LVAD駆動時及び停止時の血行動態とともに, 虚血心筋領域での心内膜側心筋組織血流量(ENDO-MBF)と心外膜側心筋組織血流量(EPI-MBF), および心内膜側心筋組織酸素分圧(ENDO-MPO2), 心外膜側心筋組織酸素分圧(EPI-MPO2)を測定した。この結果, LVADにより全身の血行動態は改善がみられたが, 虚血心筋領域でのENDO-MBF, EPI-MBF及びENDO-MPO2はLVAD駆動による有意の変化は示さなかった。一方, EPI-MPO2はLVAD駆動によりやや増加する傾向があったが, 有意差があったのは梗塞作成後1時間値のみであった。これより虚血心筋領域の局所冠循環に対するLVADの効果は一定しなかった。