1990 年 19 巻 1 号 p. 311-314
教室では1966年, 重症弁膜症に対してStarr-Edwardによる人工弁置換術を実施して以来, 多種にわたり人工弁を使用してきたが, 満足すべき成績がえられている。人工弁にも時代とともに種々の変遷がみられたが, 目下機械弁としてはtilting valveないしleaflet valveが多用されている。今回, Medtronic Hall弁(MH弁)を71症例に使用し, 種々の観点から検討を重ね若干の知見をえたので報告する。71症例の内訳は男女比は2.5:1であり, 年齢は36~67歳(平均53歳)であった。弁膜疾患の内訳は僧帽弁疾患43例, 大動脈弁疾患は24例であり, 連合弁膜症4例であった。一方, 使用したMH弁のサイズは僧帽弁位では25~31mm, 大動脈弁位には21, 23mmが使用された。人工弁の圧較差の平均は僧帽弁位では4.3mmHg, 大動脈弁位では11.5mmHgと弁サイズの差異によっても大差はなく術後は良好な血行動態がえられた。このほか, MH弁は機能的弁口面積が他の機械弁と対比して広く, しかも耐久性並びに抗血栓性に富む良好な機械弁であると結論された。