1990 年 19 巻 2 号 p. 800-804
Multi ion systemおける荷電膜のイオン透過性に与える影響を理論的に考察し, in vitro実験にて理論の正当性を検討した。次いで本理論を透析療法へ応用, 荷電膜の有用性を基礎的に検討した。理論式より得られたイオン透過係数を膜の水和度の影響を除外する為にイオン透過係数比(P. C. R.)として荷電膜のイオン透過性能の指標としたところ, 理論値とin vitro実験値とは良好な対応を示し, 本理論の正当性が裏付けられた。本理論を透析療法に応用し, アセテート透析液(A), バイカーボネート透析液(B)及び高分子荷電物質を加えた透析液でのイオン移動に与える影響を解析すると, Aでは, 正荷電膜でHPO42-, HCO3-の排泄率とCH3COOの流入率の, Bでは, 正荷電膜でHPO42-の排泄率とHCO3-の流入率の増加が認められた。高分子荷電物質加透析液ではHPO42-の排除率が増加した。以上より荷電膜におけるイオン透過性は理論的に予測可能で, 荷電膜は血液透析において効率的な電解質補正を図る上で有用と考えられた。