人工臓器
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透析膜における無機リンイオンの膜透過性
岡田 勝酒井 清孝渡辺 哲夫今村 和夫鶴見 隆須磨 靖徳
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1990 年 19 巻 2 号 p. 805-808

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抄録

イオンは、透析膜透過時に膜からの電気的抵抗を受けていると考えられる。この電気的抵抗の濃度依存性を検討するため無機リン(ip)の濃度を変化させてipの溶質透過係数(Pm)を測定した。また、透析液側のイオン強度を大きくしてipのPmを測定した。また、牛血清系でipのPmを測定し、水系実験の時と比較検討を行った。また、使用した透析膜のζ電位の測定も行った。ipのPmは、放射性同位元素で標識したNaHPO(5μCi/ml)水溶液を1本の中空糸透析膜内に密封し、一定時間透析を行い、中空糸内部の残存溶質濃度を測定して算出した。ζ電位測定には流動電位法を用いた。湿潤状態の1本の中空糸透析膜内に窒素ガスを用いてKCl水溶液を圧入し測定した。ip濃度が低いとipのPmは一定の値を示したが、濃度を大きくすると急激にPmは大きくなり、約2倍になり、一定値となった。イオン強度が大きくなると膜が見かけ上電気的に中性になり、ipのPmは大きくなった。また、牛血清系の方が水系に比べてipのPmが大きくなることが分かった。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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