抄録
呼吸・循環機能不全を人工心肺で補うという論理の妥当性にもかかわらず、臨床の実際で伸び悩んできた統計的事実、その背景、遭遇した問題点、とられてきた工夫とその結果を人工肺の観点から報告する。長期間の体外循環は、時間と共に特異な困難性が急増するから、通常の開心手術のための体外循環で得られた常識と経験に頼り過ぎずに、慎重な臨み方をしなければならない。
人工肺としては、組織親和性の良い緻密質膜でできた外部潅流型中空糸肺を、血液停滞がないように改良し、初期充填や交換が簡単なものとしていくべきである。中空糸肺の改良とともに、血管内留置型人工肺も実用化が近づいてきたので、試作中の各種の工夫も加えて紹介する。長期体外循環の安全な運行には、ハード面の研究のみならず、臨床の場に応用する場合のシステム、全国的な症例の統計などソフト面の充実も不可欠である。