人工臓器
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20 巻, 2 号
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  • 浅沼 義博
    1991 年 20 巻 2 号 p. 287
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 江口 昭治
    1991 年 20 巻 2 号 p. 289-297
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 小笠原 啓一, 酒井 清孝
    1991 年 20 巻 2 号 p. 298-303
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Na2O-B2O3-SiO2-Al2O3-CaO系の多孔質ガラス膜は耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性に優れている。また細孔直径分布が狭く、薬品洗浄などにより再生が可能という利点を持つ。合成高分子膜における血漿分離では膜間圧力差約50mmHgで溶血を起こすが、多孔質ガラス膜を用いると約100mmHgでも溶血を起こさない。多孔質ガラス膜における血漿濾過流束と総タンパク質のふるい係数は平均孔直径が1~1.5μm、膜間圧力差25mmHg、壁ずり速度2000s-1の条件において最も適切となる。血漿濾過流束は壁ずり速度が変化しても管長の(-/3)乗に比例した。濾過流束のヘマトクリツト依存性は限外濾過理論では説明できない。低温における血漿分離は、膜間圧力差25~50mmHg、壁ずり速度2000s-1の条件で実施可能である。
  • 山崎 善弥, 金井 福栄, 平石 守, 高浜 龍彦, 出月 康夫, 市川 公夫, 山家 敏彦, 井上 昇, 青木 聡, 黒田 徹, 梅香 家 ...
    1991 年 20 巻 2 号 p. 304-307
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血漿灌流吸着療法の安全性, 性能向上を目標に研究を続けてきた。今回既存のセルローズ膜型血漿分離器に代わる親水性処理したポリエチレン膜型血漿分離器を開発した。FUT175(FUTHAN)50mg/hr連続回路内注入による局所抗凝固法下, OP-02, あるいは, AP-02新旧血漿分離器使用, BR-350血漿灌流施行, 両者の検討を行った。両群共90分に亘る灌流が順調に施行された。灌流後半よりAP-02群は, OP-02群に比し血漿分離量と分離血漿蛋白濃度の低下が認められ, 新膜型血漿分離器の性能の向上が認められた。
    又空気抜きと高濾過面積をもつ中空糸使用, 高性能微粒子除去フィルターを開発した。本フィルターは, 基礎的検討で, 微粒子除去能, 血小板除去能, 3~4mの混入空気の除去能等満足すべき成果を得た。新しい血漿分離器及びフィルター使用により安全, 容易な血漿灌流法の発展が期待される。
  • 鈴木 好夫, 小椋 陽介, 大坪 修, 三田 勲司, 秋山 暢夫, 斉野 猛司, 池田 博之, 下村 泰志
    1991 年 20 巻 2 号 p. 308-313
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は、既にSepharoseCL4-BをHexamethylenediisocyanate(HMDI)で架橋し、Polyethyleneglycol(PEG)を担持させた吸着剤PC-1が、各種疾患起因因子を効率的に且つ、選択的に吸着除去することを報告した。しかし、PEGをリガンドとして担持させず、IIMDIの反応量のみを変化させた吸着剤、PC-2に於いても、同様に各種の疾患起因因子に対して高い吸着性能を示す事を見いだした。又、重症筋無力症の疾患起因因子と考えられている抗アセチルコリンレセプター抗体への吸着性能を、200mlのカラムを使用した臨床スケールで評価し、高い吸着特性が得られ、その臨床使用は充分期待できるものと示唆された。更に、PC-2へのlgGの吸着状態を高速液体クロマトグラフィーを用いて検討し、その吸着は疎水性結合と水素結合に起因していることがわかった。
  • 片岡 一則
    1991 年 20 巻 2 号 p. 314-317
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    現在、臨床医学分野においては治療目的で細胞の輸注あるいは除去を行なう事の重要性が増大している。本研究の目的は、免疫応答で中心的役割を果たす細胞であるリンパ球の亜集団を分離するための合成高分子吸着体を開発し、その細胞輸注あるいは除去療法への応用を推進することにある。その為に、吸着分離の原理としてイオン性相互作用に着目し、弱塩基性のポリアミンを枝に有する一連のグラフト共重合体を分子設計し、その有効性を検証した。その結果、ポリアミングラフト共重合体を吸着体としたカラムを用いる事によって、B細胞をカラム吸着分、T細胞をカラム流出分としてほぼ定量的に分離できる事が明らかとなった。さらに、アミノ基の一部を四級化した部分四級化ポリアミングラフト共重合体を用いると、ヘルパーT細胞とサプレッサーT細胞の分離も可能であることが明らかとなり、これら合成吸着体が細胞分離に極めて有用である事が証明された。
  • 阿岸 鉄三, 高橋 公太, 高橋 和雄, 太田 和夫, 安部 道夫
    1991 年 20 巻 2 号 p. 318-323
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    腎移植の適応拡大を目指し、従来は禁忌とされていたABO血液型不適合者間での移植を行うため、体外循環を応用した免疫吸着により予定された受腎者の血漿中から抗A抗体・抗B抗体を除去した。吸着材は、シリカビーズに合成したA型抗原、またはB型抗原を表現する三糖類を共有結合により固定化したものである。実際には、13例の患者に、術前に1回の二重濾過血漿分離交換法と4回の免疫吸着を行い、それぞれの抗体価を4X以下とすることが可能であった。1回の免疫吸着による抗A抗体の平均除去率は、IgG:49.0%、IgM:57.9%であり、抗B抗体ではIgG:78.6%、IgM:74.8%であった。
    術後2-11カ月の観察中、比較的短期間での抗体価の急激な上昇を見て、腎機能が廃絶したのは、1例のみであった。ほかの12例では、拒絶反応は起こったものの血液透析の再導入には至らなかった。
  • 四津 良平, 川田 光三, 相馬 康宏, 古梶 清和, 田口 真一, 小野口 勝久, 木曽 一誠, 川田 志明
    1991 年 20 巻 2 号 p. 324-329
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    過去6年間における開心術又は, 胸部大動脈瘤の術后重症心不全19例に対し, 単独のIABPを除く各種の人工血液ポンプを用い補助循環を行った。原疾患は虚血性心疾患7, 胸部大動脈瘤6, 弁膜疾患5, 複雑心奇形1であった。左心補助のみを6, 右心補助のみを1, 両心補助を12例に行った。IABPの併用は, 左心に遠心ポンプを用いた症例に行った。
    【結果】19例中3例が, 全ての血液ポンプから離脱出来, そのうち2例(左心補助1, 両心補助1)が長期生存している。他の1例は両心とも離脱し得たが術后1ケ月目に失った。【まとめ】術后の重症心不全19例に対し, 各種の機械的補助循環法を行った。(1)19例中2例の長期生存が得られた。(2)遠心ポンプは拍動型VASと比較し迅速簡便に装着できた。(3)6例に腎機能低下のため透析が必要であり, 遠心ポンプはHD回路組み込みに有利であった。(4)両心不全例が多く, その多くは両心補助を必要とした。
  • 金香 充範, 松田 暉, 松若 良介, 門場 啓司, 宮本 裕治, 阪越 信雄, 西村 元延, 倉谷 徹, 張 〓障, 中埜 粛, 小林 享 ...
    1991 年 20 巻 2 号 p. 330-334
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    成人開心術後の重症心不全に対する遠心ポンプを用いた左心及び両心補助循環症例11例の成績をもとに、その有用性と問題点について検討した。症例は冠動脈疾患8例と弁置換術3例であり、補助循環の適応は9例が体外循環離脱困難症例、2例が開心術後のショック症例であった。補助循環時間は33-240(平均108)時間であった。11例中、両心補助2例を含む8例(73%)が離脱に成功し、うち6例(55%)が退院した。死因は右心不全1例、離脱後の左心不全1例、左心補助を離脱できぬまま敗血症となったもの2例、離脱後10日目に冠動脈攣縮により失ったもの1例であった。合併症として2例でポンプ離脱時に脳梗塞を併発したが大きな障害を残すことなく退院した。再開胸止血術を要した症例は6例あり、うち5例が死亡症例であった。遠心ポンプによる補助循環は耐久性や抗血栓性の面で問題があるが、1週間程度までの補助には有用であり、長期生存を得るためには積極的な右心補助の適応と装着時の充分な止血及び血栓塞栓症の防止が重要であると考えられた。
  • 遠藤 真訟, 鈴木 進, 青見 茂之, 土田 弘毅, 橋本 明政, 小柳 仁, 長岡 昭二, 多賀 隆, 高橋 将人
    1991 年 20 巻 2 号 p. 335-336
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ICU、CCUにて突然に補助心臓を必要とした時、従来の空気駆動型の補助心臓では体外循環の準備に時間をとられ、救命を困難とする。我々は1985年に本学会で経皮的送血deviceを報告し、1989年、本学会で遠心ポンプを含めた全回路をヘパリンコーティングした定常流補助心臓の開発を報告した。今回、その臨床応用を経験し良好な結果を得たので報告する。
    定常流左心バイパスセットとIABPを組合せした。定常流左心バイパスセットは(1)送血カニューレ(2)脱血カニューレ(3)延長チューブ(4)コネクター(5)遠心ポンプ(6)流量計で、(1)~(4)は東レ社製、H-PSDでコーティングし、(5), (6)はスウェーデン・カルメダ社でヘパリンコーティングした。DOAを含む重症ショック例の4例に使用し、1例は脳死と判定され中止、残りの3例に使用し、3例とも本装置より離脱し、1例は長期生存した。
  • 斉藤 憲, 江口 昭治, 山本 和男, 諸 久永, 大関 一, 林純 一
    1991 年 20 巻 2 号 p. 337-341
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後人工心肺離脱不能例及び重症LOS症例のうち薬物療法やIABPによる圧補助のみでは血行動態の改善しない13例に対しヘパリンコーティングチューブとローラポンプによる補助循環を行った。補助方式は左心バイパスが7例、右心バイパス1例、両心バイパス2例、V-Aバイパス3例で平均補助流量は0.8~3.2L/min(mean±SD, 2.1±0.8L/min)、補助期間は5時間~21日間(mean±SD, 103±128時間)であった。13例中8例(61.3%)が離脱に成功し6例(46.2%)が退院した。疾患別では虚血性炉弁膜症に比し離脱、生存率が高かった。補助期間は1~4日間の補助を行った症例が高い生存率を示した。退院した症例は11~39ヵ月のfollow-upを行い、NYHA心機能分類はI度が3例、II度が3例と良好な遠隔期の成績が得られた。脳塞栓症や溶血などの重大な合併症もなく、本法は開心術後の補助循環法として有用である。
  • 中谷 武嗣, 高野 久輝, 妙中 義之, 公文 啓二, 鬼頭 義次, 藤田 毅, 川島 康生
    1991 年 20 巻 2 号 p. 342-348
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    従来の治療限界を越えた体外循環離脱困難症18例及び術後低心拍出量症候群(LOS)2例に左心補助人工心臓(LVAS)を適用した。20例中12例がLVASより離脱し、内3例が軽快退院した。これら臨床例より以下の知見を得た。1)LOS遷延例では多臓器障害を合併し、早期適用が必要であった。2)右心不全の合併をみたが、19例においては容量負荷及びカテコラミンにより循環を維持し得た。3)循環管理上、心機能の的確な評価、段階的な自己心への負荷増大、LVASからIABPへのスムーズな移行が重要で、心エコー図による経時的な観察、補助量自動制御、交互心電図同期駆動法が有用であった。4)収縮能の低下した自己心室内に血栓形成をみたが、左室局所ヘパリン化による予防が有効であった。5)大動脈弁Mモード心エコー図での心拍数補正駆出時間/左房圧により、回復可能性を評価し得た。以上より、LVASは開心術後重症心不全に対し強力な循環補助手段であるが、救命率向上にはその問題点を把握し適用する必要がある。
  • 矢田 公, 片山 芳彦, 下野 高嗣, 水谷 哲夫, 草川 實, 田中 國義, 森本 保
    1991 年 20 巻 2 号 p. 349-352
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後体外循環からの離脱が困難であった8例にLVADを行った。年齢は44才から76才, 補助人工心は6例は遠心ポンプ, 2例は国循型VASを用いた。LVAD駆動時間は遠心ポンプは6時間から7日間, VASは8日と10日であった。内遠心ポンプの2例とVASの2例はLVADから離脱が可能で, VASの1例に長期生存が得られた。これらの経験からLVAD中の血液凝血学的検討を行った。体外循環が6時間以上の症例はLVAD開始時凝固線溶系が著明に亢進しており, 臨床的にも出血傾向が見られ, 5日以上LVADを行った3例中2例に再開胸を必要とした。LVAD中は血小板数は著明に低下し, FPA及びTATは3日目頃から上昇し, 一方線溶系はそれから1-2日遅れて上昇を認めた。これらの事より3日目以降は血栓形成を来し易い状態にあり3日目以上のLVAD症例に対しては凝固線溶機能を改善する薬剤の投与が必要と考えられた。
  • 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 阿部 俊文, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 佐戸川 弘之, 渡辺 正明, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 高瀬 信弥, ...
    1991 年 20 巻 2 号 p. 353-358
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    昭和61年3月より平成元年2月までに, 開心術後IABPなどの使用によっても体外循環より離脱できなかった心筋梗塞後の中隔穿孔(VSP)5症例に左室補助人工心臓(LVAD)を適用した。年齢は平均66.2歳, 左右短絡率は平均64.4%で手術は全例, 梗塞部切除とVSPパッチ閉鎖術を行った。5例中4例においてはLVADの離脱に成功したが, 離脱4例のLVAD使用期間は1.9日から13.7日, 平均6日であった。LVADを13.7日使用した症例5はIABP離脱後も呼吸管理に難渋し, 結局多臓器不全にて術後39日に死亡した。術後1年以上の長期生存例は3例(60%)であったが, 1例は術後感染が原因と思われる仮性上行大動脈瘤, 大動脈弁閉鎖不全の為, 再入院し, 初回手術後2年に再手術を行ったが, 術後11日死亡した。残る2例は, それぞれ術後3年10カ月, 2月5カ月を経過した現在, いずれもNYHA1度で, 社会復帰している。
  • ―周術期および遠隔期成績かちみた問題点―
    佐藤 尚, 三浦 誠, 内田 直樹, 毛利 平, 仁田 新一, 石沢 栄次, 佐藤 清春
    1991 年 20 巻 2 号 p. 359-363
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    過去12年間に経験された開心術後重症心不全に対する計123例の機械的心補助方法適応症例について周術期および遠隔期の成績を検討した。IABP78例中離脱率76%, 生存退院率51%, ECMOは23例で離脱率4%, 生存はなく, 空気駆動型補助人工心臓は13例中46%で離脱, 13%生存, 遠心ポンプによる補助人工心臓は9例中22%で離脱, 11%で生存した。IABPの遠隔成績を累積生存率で示すと5年生存率82%にたいして10年では51%と, 対照群より低い生存が示された。3例の空気駆動型補助人工心臓の術後1.5年から5年の遠隔成績を調査したが, 急性心筋硬塞に対してCABGを施行した1例で5年後に左室壁の収縮低下が認められ, 駆出率は0.32であり, NYHA3度の運動機能障害が認められた。他の2例は心機能的には概ね満足すべき結果が得られた。
  • 許 俊鋭, 安達 秀雄, 高本 真一, 禰屋 和雄, 半田 宣弘, 腰塚 誠二, 木村 壮介, 横手 祐二, 上田 恵介, 尾本 良三
    1991 年 20 巻 2 号 p. 364-370
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    過去5年間に教室で7例のVAS(補助人工心臓)症例を経験し、3例(42.9%)で12カ月以上の長期生存を得た。症例は男2例女1例(28才~52才)で、左心補助2例及び右心補助1例であった。平均767±201日の経過観察で1例は1日8時間以上の労働が可能であったが、2例は下肢神経麻痺の為、1日4時間程度の軽作業についていた。心胸比は術前の62±7%より術後遠隔期には49±4%まで縮小した。心エコー図で左室収縮率63±8%、RI Angiographyでも右室駆出率41±3%、左室駆出率53±3%と正常範囲まで回復していた。
    Treadmillを施行した2例の運動耐容能はそれぞれ6.4Metz、8.3Metzまで、下肢神経麻痺のためErgometerを施行した1例では35ワット(2Hetz)までの運動負荷力河能であった。
    VAS補助施行後生存退院した3症例は全例社会復帰しており、1~2年後の遠隔期には長期生存が期待できる良好な心機能の回復が得られた。
  • 巽 英介, 妙中 義之, 赤城 治彦, 中谷 武嗣, 佐々木 栄作, 後藤 昌弘, 関井 浩義, 矢倉 明彦, 増澤 徹, 榊 雅之, 松尾 ...
    1991 年 20 巻 2 号 p. 371-376
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    長期間使用可能な人工肺の開発を目的として, 長期評価方法や新規の素材・構造の検討を含めた幅広い研究を行なっている. 長期評価方法に関しては, 補助人工心臓を使用した右心バイパスの慢性動物実験で, 送血管に人工肺を挿入して種々の因子を安定して評価し得るモデルを考案した. 長期使用可能なガス交換膜の開発については, 血漿漏出の防止が可能な2種類の特殊微小孔膜に対するヘパリン化処理, およびヘパリンの徐放性を有する新しい均質膜の開発を企業との共同研究により行ないつつある。新規の呼吸補助装置としては,シリコンオイルとフルオロカーボンを血液層上下に積層して液/液界面でガス交換を行なう液層型人工肺, および人工心臓と人工肺の一体化により抗血栓性とガス交換効率の向上, 全体の小型化等を図った心肺補助装置を開発中である. 長期間使用可能な人工肺の開発は, 単一のアプローチでは困難であり, 多面的で幅広い研究が必要であると考える.
  • 森岡 亨, 寺崎 秀則, 大津 哲郎, 江崎 公明
    1991 年 20 巻 2 号 p. 377-380
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    呼吸・循環機能不全を人工心肺で補うという論理の妥当性にもかかわらず、臨床の実際で伸び悩んできた統計的事実、その背景、遭遇した問題点、とられてきた工夫とその結果を人工肺の観点から報告する。長期間の体外循環は、時間と共に特異な困難性が急増するから、通常の開心手術のための体外循環で得られた常識と経験に頼り過ぎずに、慎重な臨み方をしなければならない。
    人工肺としては、組織親和性の良い緻密質膜でできた外部潅流型中空糸肺を、血液停滞がないように改良し、初期充填や交換が簡単なものとしていくべきである。中空糸肺の改良とともに、血管内留置型人工肺も実用化が近づいてきたので、試作中の各種の工夫も加えて紹介する。長期体外循環の安全な運行には、ハード面の研究のみならず、臨床の場に応用する場合のシステム、全国的な症例の統計などソフト面の充実も不可欠である。
  • 末田 泰二郎, 福永 信太郎, 浜中 喜晴, 松浦 雄一郎, 後藤 誠, 佐藤 雅文, 右原 義久, 吉本 文雄, 土谷 太郎
    1991 年 20 巻 2 号 p. 381-384
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    シリコーン中空糸を用いた新しい膜型人工肺を開発した。熱交換器の周りに巻かれたシリコーン中空糸の外部を静脈血は落差で灌流し、ガス交換され動脈血が貯血される膜型肺である。実験は緬羊10頭を、高灌流量群(Qb=4.7±0.5L/min、6頭)、低灌流量群(Qb=11/min、4頭)に分け、8時間の常温体外循環を実施し、ガス交換能や血液適合性の検討を行った。全例順調に8時間の体外循環が実施できた。V/Q1の条件下、両群ともにガス交換能は良好であつた。また8時間の体外循環中、ガス交換能は安定しており経時的低下は認められなかつた。溶血、血小板数の変化、血中酵素の上昇は僅かであつた。フイブリノーゲンの消費も認められなかつた。本人工肺はガス交換能や血液適合性に優れ、動脈血貯血方式のため、拍動流や分離体外循環にも対処し得る膜型肺である。
  • 辰口 俊秀, 桑名 克之, 中西 光, 酒井 清孝
    1991 年 20 巻 2 号 p. 385-390
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    膜型人工肺における酸素透過抵抗の大部分は血液側に存在する。外部灌流膜型肺は血液の流れが乱れているため、血液側の境膜が有効に破壊される。中空糸を斜めに編み込むことで、この血流の乱れを促進することが可能である。流動状態がガス交換能に及ぼす影響を検討するために、中空糸の編み込み本数を変化させた。編み込み本数を1本にしたとき、最も高い総括物質移動係数が得られた。X線CTおよびパルスリスポンス法を用いて流動状態を観察したところ、編み込み本数1本で均一な流動状態が観察された。また、編み込み本数1本は中空糸同志の接触面積が少ないため、有効膜面積が増加している。これよりガス交換能の向上は流動状態の均一化と、有効膜面積の増加に起因するものと考えられる。しかしモジュール単位でのガス交換能は編み込み本数2本が最も優れており、良野な流動状態を損なわずに高膜面積が得られる充填方法の開発が望まれる。
  • 松若 良介, 松田 暉, 金香 充範, 宮本 裕治, 門場 啓司, 阪越 信雄, 西村 元延, 張 〓嶂, 倉谷 徹, 雨宮 彰, 川島 康 ...
    1991 年 20 巻 2 号 p. 391-395
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    遠心ポンプ以外の人工肺を含む回路、送脱血管をヘパリン化処理し、ヘパリン非投与下のECMOを実験的に検討した。ECMO装置は、小児用遠心ポンプ、0.8m2ホローファイバー内部灌流型膜型肺、送脱血管、チューブで構成され、リザーバーを持たない閉鎖式回路とした。実験は雑種成犬10頭を用い、流量500ml/分で12時間のveno-venous ECMOを行った。I群(n=6)では、遠心ポンプ似外の全ての部分に共有結合法によるヘパリン化処理を行い、ヘパリンの全身投与を全く行わなかった。II群(n=4)では、装置のヘパリン化処理を行わなず、通常のヘパリン全身投与を行った。12時間のECMOの間、人工肺のガス交換能(O2添加能、CO2除去能)、血液損傷(血小板、ヘマトクリット低下率)は両群間に有意の差を認めず、またI、II群とも、肉眼的及び電子顕微鏡的に回路内及び遠心ポンプ内に血栓の付着を認めなかった。今回のヘパリン化処理人工肺及びチューブを用いた簡易化ECMO装置は、ヘパリン非全身投与下でも、従来のヘパリン全身投与下のECMO装置と同等のガス交換能、抗血栓性を有すると考えられた。
  • 谷下 一夫
    1991 年 20 巻 2 号 p. 396-400
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工肺を急性呼吸不全の治療に使用する場合、長期間の血液灌流に対して、安全性や信頼性の高い人工肺が必要となる。とくに血液灌流の方式も内部灌流式に加えて、外部灌流式が良好なガス交換性能に故に注目されている。ガス交換性能を改善することにより、人工肺の小型化が実現し、静脈内留置が可能となる。本研究で織り込み管を用いた著者らの一連の研究結果から外部灌流によるガス交換性能の改善の可能性に関して、検討を行なった。織り込み管の外部を血液灌流させると、管の回りの流れに渦が形成され、その対流効果によって著しく酸素加性能が改善され、酸素飽和度の増加する割合が高くなる。従って織り込み管を最適な密度で充 することにより、最適な対流効果が得られることが明かとなった。
  • 白川 元昭, 江上 純, 宮田 哲郎, 進藤 俊哉, 高木 淳彦, 佐藤 紀, 多田 祐輔, 出月 康夫
    1991 年 20 巻 2 号 p. 401-405
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Filtration法を用いて血管内皮細胞のみ及び内皮細胞と血管平滑筋細胞を混ぜて生着させた2種類のprelined graftを作成して雑種成犬の大動脈へ移植し, 短期回収グラフトの組織学的変化を検討した。対照部がブイブリンを主とした血栓のみで被覆されていたのに対し, 内皮細胞を生着させたグラフトでは広範囲に内皮細胞による被覆及び内膜内の毛細血管の増生が観察された。内皮細胞と平滑筋細胞を生着させたグラフトでも内腔面は一層の内皮細胞様の細胞層に被覆されたが, その下層には, 主として横方向に重層する平滑筋細胞層の形成が認められ, また平滑筋細胞層の間やその下層には毛細血管形成も見られた。繊維に絡みつくようにして生着させただけの個々の細胞が生体内において, 早期の内皮化や平滑筋細胞層の形成といった細胞の再構築を生じることはハイブリッド型人工血管の設計の上で興味ある所見と思われる。併せてprelined graftの研究現状についても言及した。
  • 野一色 泰晴, 冨澤 康子, 大越 隆文, 佐藤 伸一, 山根 義久
    1991 年 20 巻 2 号 p. 406-409
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工血管に永久的抗血栓性を賦与する方法としては、内皮細胞による人工血管内面の被覆が最良であると考えられているが、その完全被覆には長時間を要し、治癒力の低下した高齢患者などではそれを望むことはできない。この現状を打破するため、自家静脈細切片を布製人工血管に絡ませ、移植することにより、急速な新生血管壁形成を行わせ、内皮細胞被覆を得る方法を開発し、それを小口径人工血管に応用した。具体的方法としては、成犬頸静脈を切除し、剪刀にて細切し、生理的食塩水中にいれて組織片浮遊液を作成する。次に内径4mm、長さ6cmの高有孔性ポリエステル布製人工血管に圧力をかけて浮遊液を通過させて、組織片を絡ませた後、それを成犬の両側頸動脈に植え込んだ。その結果10本中4本が1週間以内に感染を合併し、血栓性閉塞を来したが、残り6本は開存し、良好な新生血管壁を維持し、内皮細胞被覆を得ることができた。
  • 丹生 智史, 佐藤 伸一, 神田 圭一, 白方 秀二, 岡 隆宏, 野一色 泰晴, 車谷 元, 山田 京子, 渡辺 幸二
    1991 年 20 巻 2 号 p. 410-413
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    自家組織は移植材料として最良のものである。自家結合織を人工血管として使用した場合、結合織中に豊富に含まれる毛細血管が人工血管内腔面に開口し内皮化をもたらずという特異な治癒形態を示す。我々の開発している自家結合織人工血管はさらに次のような大きな特徴を有している。(1)結合織の支持体に超極細ポリエステル繊維(UFPF)を使用した。UFPFは細胞親和性に優れており結合織の形成を促進し、従来6週間以上かかった準備期間を3週間に短縮した。(2)新しく開発した方法により、わずか15分で結合織管の治癒特性を阻害することなく一時的抗血栓性賦与が可能となった。結合織の主成分であるコラーゲンは血栓性に働きそのままでは小口径代用血管として使用できない。本法は早期の血栓性閉塞を予防するうえで有効であった。以上の2点を中心に、現在さらに細部にわたって改良を加えている。将来、本結合織管は臨床応用可能な小口径代用血管になると考えている。
  • 笹嶋 唯博, 久保 良彦, 小窪 正樹, 森本 典雄, 境 普子, 中山 一雄
    1991 年 20 巻 2 号 p. 414-419
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体由来代用血管の優れた生物学的適合性を明らかにするため自家静脈(AVG), Glutaraldehyde (GA)固定ヒト臍帯静脈(GAUV)をイヌ腹部大動脈に移植し、その最内面構造を形態学的に検討した。対象として、AVGは内面をガーゼ擦過した群: 6頭、トリプシン処理: 3頭で最長6週まで観察した。GAUVは実験時期と期間の違いにより、1群: 60分移植19頭、II群: 1~35カ月移植44頭、III群: 内弾性板(IEL)を完全に温存するため分娩直後固定GAUVを作成、これを60分~4カ月移植した5頭である。AVGガ-ゼ擦過群は全例開存で6週で再内皮細胞化が完了したが、トリプシン処理では全例閉塞したことから自家血管としての優れた内膜自体の抗血栓性の存在が推察された。GAUV I群では島状血栓形成を示し、無血栓野はIELの残存領域と一致していた。II群では、血栓沈着も吻合部内膜肥厚(AIH)もなく長期間安定して開存した3グラフト(7%)が経験され、これらはIELが良好に温存されていた。III群は、IELが完璧に温存されており、良好な抗血栓性を示すと共に、4カ月ではあるがAIHも完全に抑制されていた。以上より、IELは極めて抗血栓性が高く、長期的にも優れた生物学的適合性を示すことから小口径代用血管の開発における望ましい内面性状と考えられた。
  • ―透析療法の影響について―
    秋沢 忠男, 高橋 淳子, 米 賢二
    1991 年 20 巻 2 号 p. 420-424
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    モノカイン仮説の妥当性を臨床的に検討する目的で, 新開発の高感度TNF-α測定法を用いて, 透析中, 透析間の血清TNF-αの変動を34例の透析患者で検討した。透析前TNF-αは透析患者で健常人に比し有意の高値を示したが, 日常使用している透析液種, 透析膜種の影響は認められなかった。透析前TNF-αは透析期間と弱い逆相関を示した。透析中TNF-αは透析液種(酢酸, 重炭酸透析液), 透析膜種(再生セルロースあるいは合成高分子系low flux膜, high-performance膜)にかかわらず有意に変動しなかった。透析間には透析開始後12時間で, 正常域内での変動であつたが血中エンドトキシン濃度に有意の上昇がみられたものの, TN: F-αは変動しなかった。以上の成績から, 透析患者の高TN: F-α血症には透析療法以外の要因が関与し, 通常行われる透析療法はTNFαを指標とする限り, 少なくともendocrine作用をもたらす程のTNF-αの分泌亢進をもたらさないと考えられた。
  • 佐中 孜, 西川 恵, 寺岡 慧, 阿岸 鉄三, 太田 和夫, 杉野 信博
    1991 年 20 巻 2 号 p. 425-428
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究は, 血液透析療法実施中の患者から採取された好中球の活性酸素生成反応に澄ける透析膜素材と血漿成分との相互反応の役割を解明することを目的とする。活性酸素生成は2′7-dichlorofluorescin diacetateを用いたflowcytometryおよびルミノール化学発光法にて測定した。
    臨床例では, 通常セルロース膜(C膜)の場合, 透析開始後15, 30分で活性酸素産生好中球のが増加するのに対して, セルローストリアセテート膜ではほとんど変化が認められなかった。しかし, 血漿を含まない電解質緩衝液に浮遊させた白血球は, C膜であってもほとんど変化しなかった。すなわち, 血液透析法中の好中球による活性酸素生成反応は疑いの余地のない事実と考えるが, その反応の初期段階は, 透析膜素材だけでなく, 何らかの原因で活性化された血漿成分(C5aなど)が必要であると推察された。
  • 鈴木 正司, 保科 繁, 阿部 町子
    1991 年 20 巻 2 号 p. 429-433
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    腎不全に対する血液浄化療法において、膜素材と血液とのbiointerfaceのひとつの局面として、膜による血漿成分の吸着について検討した。膜切片と血漿とのin vitro incubation実験により、セルロース系膜では強い吸着現象は認めなかった。合成高分子膜では、グルカゴン、PTH、β2-ミクログロブリン、リボヌクレアーゼ、リゾチーム、ミオグロビン、レチノール結合蛋白に対し、各々の膜に特異的な吸着が確認された。
    さらに抗凝固剤として用いられるFUT-175は、PMMA(B-2)およびPAN膜に強く吸着されることも確認した。
    以上の如く透析膜による特異的な物質吸着は、素材と血液とのbiointerfaceの重要な局面のひとつである。
  • 張 〓嶂, 松田 暉, 金香 充範, 松若 良介, 阪越 信雄, 西村 元延, 倉谷 徹, 中埜 粛, 川島 康生, 飯田 和利, 金子 憲 ...
    1991 年 20 巻 2 号 p. 434-437
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体外動脈間パイパスモデルを用い、新しい抗血栓性材料の抗血栓性について実験的検討を試みた。無処理ポリ塩化ピニルチユーブ(PVC)をコントロールとし、ポリウレタンチユーブ及びヘパリン含有ポリウレタンをコーティングしたチューブで、実験犬に一時的体外バイパズを施行した。肉眼的に血栓形成の状態を、電顕的に粘着した血小板の付着量及び形態変化を観察検討した。尚、バイパスの経過と共にACT値、血中ヘパリン濃度、血小板数及びFDP値を測定した。血小板数とFDP値の推移よりバイパス中の凝固能は生理的条件下に保たれていた。バイパス血流量は75ml/min, 剪断速度は24.8±5.0sec1であった。この厳しい条件下に:おいてヘパリン含有ポリウレタンはACT値に影響を与えず、肉眼的にはPVC, ポリウレタンに比較して血栓形成は軽度で、電顕的所見でも他の両者に比し血小板の凝集、変性は極めて軽度であった。以上より、ヘパリン含有ポリウレタンは低流量においても優れた抗血栓性を有していると推察される。
  • 丹生 智史, 松田 武久, 岡 隆宏
    1991 年 20 巻 2 号 p. 438-444
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工基材上における新生内膜形成の材料依存性について、ウシ内皮細胞を用いてin vitroでの検討を行った。基材には4種類のセグメント化ポリウレタンおよび3種類のタンパク質をコーティングしたガラスを使用した。接着・伸展・増殖・移動(速度・方向性)の個々の細胞行動と内皮化過程は以下のような関係にあった。(1)接着・伸展・増殖に不適当な基材は細胞移動能に関係なく内皮化過程も不良であった。(2)接着・伸展・増殖に加えて移動速度と方向性ともに良好な場合、内皮化は極めて促進された。これらの内皮化速度は材料の種類および吸着タンパク質の種類に大きく依存していた。人工血管等の循環器系人工材料の設計にあたっては、内皮化過程に関する限り細胞の付着性や増殖能のみならず細胞移動能をも考慮することが重要であることを指摘した。
  • 鈴木 嘉昭, 日下部 正宏, 秋庭 弘道, 日下部 きよ子
    1991 年 20 巻 2 号 p. 445-450
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    111In-tropoloneにより標識した血小板及び67Gaにより標識したフィブリノーゲンを用いてin vivoで人工材料の抗血栓性の評価を行い, この両者の血栓検出能の比較を行った。ラットに麻酔下にてシリコーソカテーテルを頸静脈から右心房へと進め, 111In-tropolone-血小板あるいは67Ga-フィブリノーゲンを尾静脈より血管内に投与した後, 一定期間留置した。その後ラットを脱血死させ, 主臓器および試料を採取し, シンチレーションカウンターにて放射能をカウントし, 試料および各臓器への集積率を求めた。67Ga-フィブリノーゲン, 111In-tropolone-血小板で試料および主臓器での血栓検出能が異なり, SVCでフィブリノーゲソ, 試料+心臓部では血小板が血栓検出感度が高いことが観察された。また人工材料の留置による主臓器へのフィブリノーゲン, 血小板の集積率の増加が観測された。抗血栓性の評価では人工材料表面のみならず, 主臓器への人工材料留置の影響も考慮することが必要であると考えられた。
  • 渡辺 昭彦, 中林 宣男
    1991 年 20 巻 2 号 p. 451-455
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    細胞内に含まれるATP, ADPおよびAMPなどアデニン類を定量する方法を、材料表面に粘着した血小板数を定量できるように改良した(ATP定量法)。本法の特徴としては、細胞中に含まれるアデニン類の分離定量法を利用しているため、検出感度が高く、操作が簡便で再現性に優れている。さらに血液中のタンパク質を簡単な操作で取り除くことができアデニン検出が妨害されないこと、材料の形状や性質にもとつく制約が少ないことなどの特徴を有し、各種材料の抗血栓性を定量的に評価する手段として利用できる。
    著者らが新しい生体適合性材料として研究を行っている2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)共重合体表面と代表的ポリマーの表面における血小板の挙動をATP定量法で測定し、比較したところ、MPC共重合体上には血小板がほとんど粘着しないことが示され、SEMによる観察結果と一致した。
  • 小野田 正, 阪上 賢一, 松岡 順治, 塩崎 滋弘, 内田 晋, 藤原 俊義, 折田 薫三
    1991 年 20 巻 2 号 p. 456-459
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    サイトカインの一種であるInterleukin 2(IL-2)の徐放製剤IL-2 mini-pelletを肝細胞癌患者に対して臨床応用し新しい癌免疫療法としての可能性について検討した。
    6人の肝細胞癌患者に対しその肝動脈内に動脈塞栓療法あるいは抗癌剤動注療法を併用しIL-2 mini-pelletを投与, その臨床および免疫学的治療効果を検討した。画像診断による治療効果判定では6例中1例でPRが, 1例でMRが認められ血清AFP値は4例で低下した。さらに末梢血のNK, LAK活性を検討したところ4例中1例でNK活性の上昇が認められIL-2添加3日間培養後では全例でNK, LAK活性の上昇を認めた。リンパ球サブセットの検討では5例中4例でCD16+細胞の増加を認めた。
  • 谷口 正哲, 竹山 廣光, 水野 勇, 品川 長夫, 由良 二郎, 吉山 直樹, 青木 秀希
    1991 年 20 巻 2 号 p. 460-464
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体製皮膚端子付静脈内留置カテーテルの臨床的有用性を検討するため、28名の患者に、32回のカテーテル留置を施行した。従来型カテーテルに比較し、より長期間(平均76.1日)の留置と、より低いカテーテル感染発生(CSFI=1.23)が観察された。端子に応力が加わらぬような配慮が必要ではあるが、消毒処置が不要で、入浴も可能になるなど患者のquality of lifeへの寄与は多大であり、長期留置型カテーテルとして良好な有用性を示し、今後の製品化・普及が期待された。
  • 吉田 亮, 酒井 清孝, 岡野 光夫, 桜井 靖久
    1991 年 20 巻 2 号 p. 465-469
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    感温性を有するイソプロピルアクリルアミドとアルキルメタクリレートのコポリマーゲルを用いて薬物透過・放出のON-OFF制御を行い、ポリマーの化学構造変化とゲル表面の収縮過程との関連を、ゲル内部における薬物移動の制御という立場から検討した。アルキル鎖長の異なるゲル膜を2-チャンバーセルの間にはさみ、抗炎症剤であるインドメタシンの膜透過性を20℃と30℃の段階的温度変化下で測定した結果、透過の完全なON-OFFを確認した。これは20℃から30℃に変化したときにゲル表面に生じる収縮層が薬物の透過を妨げることによる。再び20℃に下げると薬物は透過を開始し、30℃で薄い収縮層を形成するゲルでは大きな初期透過速度を示した。このことはOFF状態の間で薬物がゲル内部で移動することを示唆し、ゲルを放出制御素材とした場合放出速度の低下を抑制する。ポリマーのアルキル鎖長を変えることで表面収縮層の生成過程が変化し、ゲル内部の薬物移動を制御できる。
  • ―ポリリジン誘導体の構造・機能相関―
    伊藤 広治, 野本 洋一, 赤池 敏宏
    1991 年 20 巻 2 号 p. 470-473
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    医薬評価・ホルモン応答の解析等を目的とした肝シミュレーターや肝機能補助装置を開発するためには細胞接着基質材料の開発が必要不可欠である. 細胞を基質に固定化させる相互作用には疎水結合などの物理化学的結合である非特異的相互作用と, 細胞表面レセプターの関与する特異的相互作用がある. 本研究では, 主として肝細胞-基質材料間のイオン性相互作用に着目し, カチオン性ポリアミノ酸であるポリ-L-リジン誘導体を用いて肝細胞の培養初期における挙動を解析した.その結果, カチオン基導入率10~18の間に肝細胞の機能維持に最適なカチオン基密度があることが示された. また, このポリマーに対する肝細胞の接着性に及ぼす温度や二価カチオンの影響を検討した結果, この接着には複数の相互作用が関与していること, およびそれらがメジウム, 温度などの環境条件や時間に依存して変化することが示唆された。
  • 駒井 喬, 中村 崇人, 小林 直之, 橋村 悦朗
    1991 年 20 巻 2 号 p. 474-477
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    細胞接着性ペプチドの立体構造を模して、疎水性表面に陽性荷電側鎖が点在する構造を形成させるべく、組成比の異なるスチレンとアミノメチルスチレン(AMSt)のコポリマー(AMSt仕込み比10%から90%まで五種類のコポリマー(AM-10, 30, 50, 70, 90))と、AM-10を基幹として、この側鎖にアルキル鎖長の異なるアミノアルキルカルボン酸(アルキル鎖長3, 5, 7, 10)を導入した、スペーサーを持つ四種類のコポリマー(AM-10-III, V, VII, X)を合成し、成膜に成功した。AM-90表面ではFCS添加条件下AM-10-III表面ではFCS無添加条件下でイヌ肝細胞は極めて優れた接着性と伸展性を示し、コラーゲン塗布プラスティックディッシュ上FCS添加条件下培養したものに匹敵する極めて優れたDNA合成能と尿素合成能を発現した。膜表面の諸物性はAM-90とAM-10-IIIで特に対称的な値を示し、前者では吸着したFCSを介して、後者は直接肝細胞と相互作用しているものと推察された。
  • 三宅 仁
    1991 年 20 巻 2 号 p. 478-482
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新しい素材である形状記憶合金を用いた人工筋肉の応用として、人工手に相当するグリッパを開発し、これを組み合わせてグリッパ付き人工腕、すなわち形態的にほぼ完全な人工腕の開発を行なった。これは、新たにグリッパ用にコンパクトな人工筋肉を製作し、これを既開発の2関節マニピュレータに取り付け人工腕を構成したものである。この結果、(1)グリッパ用人工筋肉のボディ形状を角柱にし、全長で5mm、体積比58%の縮小化を図れた。(2)トルク荷重の増加と自重の影響で動作角度はあまりとれなかったが、グリッパ取り付けによる自由度の増加が得られた。(3)2関節マニピュレータの最大持ち上げ可能重量は4.9N、グリッパの最大把握力は6.5Nであった。(4)内骨格化等の軽量化を図ることにより、実用化が期待される.などが明らかとなった。また人工筋肉の疲労は、加熱の調節により軽減され、飛躍的に寿命が延長することが明らかとなった。
  • 門磨 義則, 今井 庸二
    1991 年 20 巻 2 号 p. 483-487
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    メタノール抽出により精製したセグメント化ポリウレタンをラットの背部皮下に21ヶ月間にわたって埋植した。経時的に回収したポリウレタンフィルムの表面性状、機械的性質、固有粘度などの変化について検討した。埋植後12週頃からフィルム表面の白濁化が認められ、その後次第に拡大していったが、埋植期間中の破損や断片化は生じなかった。フィルム表面のATR-FTIRはポリウレタンの劣化を示唆する特徴的な変化を示した。ポリエーテルに基づく吸収の低下、エステルのC=Oの吸収の出現、非水素結合性のウレタンのC=Oの吸収の低下などから、表面において加水分解や酸化反応による分解が起こっていることが明らかとなった。引張強さは埋植後経時的に減少し、破断時の伸びも埋植10ヶ月以降低下したことなどから、埋植後フィルム表面から内部へ徐々に劣化が拡大していくと考えられた。
  • 飯田 和利, 金子 憲明, 下村 泰志
    1991 年 20 巻 2 号 p. 488-492
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    ヘパリンの薬理作用に基づく抗血栓性獲得を目指した材料の分子設計を行うに当たり、新しいヘパリン化方法を検討し、この方法を用いて合成したヘパリン化ポリウレタンの抗血栓性をin-vitro評価法により評価した。
    アニオン性ポリマーであるヘパリンと重合性官能基を有するカチオン性界面活性剤型モノマーによりイオンコンプレックスを合成した。このイオンコンプレックスはイオン当量的にイオン結合しておりモノマーの適度の疎水性より極性有機溶剤に可溶であった。このイオンコンプレックスをコモノマーとともにポリウレタン溶液中で重合して得たヘパリン化ポリウレタンはin-vitro評価の結果、高い抗血栓性を有していることが明らかとなった。この抗血栓性材料からのヘパリンの溶出は大きく制限されており、抗血栓性は材料表面に存在するヘパリンの抗凝固活性が寄与しているものと考えられた。
  • 高塚 旨寛, 松田 武久
    1991 年 20 巻 2 号 p. 493-496
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    材料表面に蛋白質を固定化し細胞の接着性を制御する方法が一般に知られている。本研究では蛋白質の化学固定化材の開発を目的とした。側鎖に活性エステル基を有し溶媒キャスト可能な共重合体を合成し蛋白質の材料表面表面への化学固定について検討した。N-アクリロキシスクシンイミドとスチレンの共重合体のキャスト膜を用いることにより、蛋白質が化学固定可能であった。この膜にフィブロネクチン及びアルブミンを化学固定し細胞接着性を観察したところ、フィブロネクチン固定化膜では細胞接着性表面、アルブミン固定膜では細胞非接着性表面となった。更に固定化した蛋白質層の安定性について物理吸着と比較した結果、物理吸着では蛋白質の脱離・置換が起こっており化学固定の優位性が示された。
  • 大崎 健一, 小西 淳, 池上 和仁, 小出 幹夫
    1991 年 20 巻 2 号 p. 497-502
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    短時間熱脱水架橋した線維化アテロコラーゲンと熱変性アテロコラーゲン複合体で構成される人工真皮を開発した。そこで、ラット全層皮膚欠損創にこの人工真皮を貼付し、さらに同時或いは1、2週後に自家の薄い分層皮膚(S.T.S.)を重ねて移植した。その結果、S.T.S.生着率は、同時に重層移植した群で50%、1週間後移植群で60%、2週間後移植群では90%と高率であった。組織学的には、生着例ではいずれも疑似真皮様となった人工真皮の上に、S.T.S.が極めて自然に密着していた。S.T.S.の表皮基底細胞は、植皮6日後には、BrdU(チミジンアナログ)の盛んなとり込みも見せ、旺盛な分裂増殖能を示した。以上より、この人工真皮は生体適合性が高いため薄い分層植皮の為の良いbedとなり、厚い皮膚移植や皮弁以外に方法がなかった全層皮膚欠損創の再構成にも貢献出来る可能性があるものと考えられた。
  • 小西 淳, 池上 和仁, 小出 幹夫
    1991 年 20 巻 2 号 p. 503-508
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    親水性に富みハイドロゲル形状をとるカルボキシメチル化セルロース(CMC)に、水分調節性に優れ細菌を通さないシリコーン膜をラミネートして、二層状のCMC創傷被覆材を作製した。この被覆材は、正常皮膚の3~6倍の水蒸気透過性を有し、必要十分な強伸度を持ち、湿潤下での水膨潤により透視性・密着性に優れると同時に摩擦係数が非常に低く円滑な感触を保ち、創面を機械的傷害から保護するとともに適度なwet dressing状態を維持できる。家兎及びラット背部に浅在性の創傷面を作製して試験したところ、受傷後3日で他の被覆材では極めて表皮化が遅れていたが、CMC被覆材では80%近い表皮化率を示し、表皮再生促進効果が認められた。受傷後14日目には他の例で表皮肥厚が存在したがCMC被覆材では認められず、整容的効果が確認された。また他と比べてCMC被覆材は組織学的にも炎症性が極めて低く、疼痛を軽減できる可能性が示唆された。
  • ―肋骨接合材、人工肋骨のためのバイオメカニクス―
    中村 達雄, 清水 慶彦, 渡部 智, 松井 輝夫, 奥村 典仁
    1991 年 20 巻 2 号 p. 509-512
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    肋骨接合材や人工肋骨を設計する際の構造力学的検討をするために、イヌの肋骨の曲げ試験を行った。
    4匹の雑種成犬体重10~14kgの両側第1~13肋骨を用い肋骨結節より30mmの部位で3点曲げ強度を測定した。曲げ破壊強度は23.9±6.6kgf、曲げ強さより換算した曲げ応力σfは8.5±2.2kgf/mm2。曲げ強度より求めたヤング率は平均185.8kgf/mm2。ステンレスのσfは30kgf/mm2、分子量20万のポリ-L-乳酸では10kgf/mm2である。
    同一犬では左右差は見られなかった。クロスヘッドスピードを10mm/minから500mm/minにすると約10%程度曲げ強度の上昇がみられたが、これは肋骨の粘弾性体としての性質によるものと思われる。
  • 住元 一夫, 田中 一誠, 大段 秀樹, 前田 貴司, 大城 久司, 土肥 雪彦, 土谷 太郎, 筏 義人
    1991 年 20 巻 2 号 p. 513-515
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血管内腔に異物を介さない血管吻合であるcuff法は、従来臓器移植実験に用いられている。最近開発された吸収性縫合糸と同様の組成をもつ生体内分解吸収性材料からこのcuffを作製しラット肝移植モデルの血管吻合に使用し20週までに完全に吸収されることを以前報告した。今回移植後1年目の吻合部所見と慢性腎不全患者11名のblood access作製に使用し検討した。移植後1年目の吻合部位に狭窄所見及び炎症細胞浸潤を認めなかった。radial arteryとcephalic veinの端々吻合にcuff血管吻合に応用したところ11例中10例血液透析可能で十分な血液量を維持し感染及び異物反応の合併症なく現在も経過している。経時的な血管造影から吻合径の急速な拡張を認め20週目までに狭窄率は30%以内に減少した。このことは生体内分解吸収性cuff血管吻合は良好なflexibilityを有する臨床応用可能な方法であることが確認された。
  • 相田 弘秋, 栗林 良正, 桜田 徹, 関根 智之, 後藤 由和, 関 啓二, 柴田 芳樹, 目黒 昌, 阿部 忠昭, 高橋 芳右, 柴田 ...
    1991 年 20 巻 2 号 p. 516-520
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    酢酸デスモプレシン(以下DDAVP)の開心術後出血量軽減効果の有無を検討した。対象は成人開心術20症例で, これをDDAVP投与群と非投与群, さらに人工肺の種類(気泡型と膜型)によって4群に分け, 術後24時間出血量及び血液凝固線溶系因子を第28病日まで経時的に測定し, 以下の結論を得た。
    (1)術後24時間出血量はDDAVP投与群, 非投与群及び人工肺の種類による有意差を認めなかった。(2)von Willebrand因子抗原, 第VIII因子活性, ristocetin cofactorは各群で体外循環終了後上昇傾向を示したが, DDAVP投与による新たな上昇は各群とも認められなかった。これは, すでに体外循環中に上記因子の血中放出が起こっているため, もはやDDAVP投与によって新たな血中放出は起こり難いことを示している。以上今回の検討ではDDAVPの開心術後の明らかな出血量軽減効果は認められなかったが, いまだ明確な結論鳳なく今後さらに検討を重ねる必要があると考えられた。
  • 阪上 正裕, 酒井 清孝
    1991 年 20 巻 2 号 p. 521-525
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Swan-Ganz熱希釈カテーテルにおけるサーミスタの時定数のばらつきに影響されない新しい心拍出量算出法を考案した。心臓を模した自作伝熱撹拌槽を用いて牛血液の流量を測定し、時定数が流量の測定値に及ぼす影響について検討した。サーミスタの時定数はカテーテルにより大きくばらつき、従来の流量算出法では測定流量に大きな誤差が生じた。低流量で最大32%、高流量でも大きい時定数で最大9%の誤差が得られ、実測流量と一致しなかった。一方、ニュートンの冷却の法則に基づく新しい流量算出法による測定流量は実測流量と有意に一致し(p<0.01, NS)、時定数のばらつきに影響されなかった。さらに、新しい流量算出法は指示薬の注入条件に影響されず、モニタへの補正係数の代入が不要となる。新しい流量算出法により、各力テーテルの時定数のばらつきと指示薬の注入条件に影響されない心拍出量測定が可能となる。
  • 柳沢 真澄, 板垣 一郎, 酒井 清孝
    1991 年 20 巻 2 号 p. 526-530
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    蛍光物質の消光現象を利用した光ファイバ酸素センサを作成し、その気体中および水中での応答特性について検討した。今回使用した蛍光物質のDecacycleneは、酸素分子の存在により特異的に消光される性質がある。本研究では、Decacycleneを含浸させたシリコーン膜中を光ファイバの先端に装着した幾つかの酸素センサを用い、その気体中および水中での酸素分圧変化に対する蛍光強度を、光電子増倍管を用いて計測した。本装置により、気体中および液体中での、温度、流動状態に依らない酸素分圧測定が可能であった。また、シリコーン膜厚を46.36μmとすることにより、従来の装置と比較して高速応答性に優れた酸素センサを作成することができた。本センサは人工肺などの酸素モニタリングへの応用が可能と考えられる。
  • 片見 一衛, 笈沼 宏, 金澤 進一, 山之内 昭介, 熊田 敏彦
    1991 年 20 巻 2 号 p. 531-534
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    Technograft®と同様の壁構造をもつ、内径2mm、繊維長15、30、60および90μmのexpanded polytetrafluoroethylene(EPTFE)入工血管を試作し、長さ2mで各々12羽のNZW系ウサギの左総頸動脈を置換した。置換8週後の材料について鍍銀染色後のen face観察、ならびに組織学的観察を行い器質化、特に内皮化に対する繊維長の影響について検討したところ、繊維長が30μm以上のEPTFEでは15μmのものに比べ吻合部からの内皮化が有意に促進していた。この内皮化の促進には繊維長の増大にともなう初期血栓膜の安定な形成、およびそれに付随する良好な器質化が関係している可能性が示唆された。なお、繊維長の増大による開存率の低下、および血腫あるいは漿液腫などの合併症の発生は見られなかった。
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