人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
Print ISSN : 0300-0818
ISSN-L : 0300-0818
麻疹肺炎に対する38日間のECLAの経験
大津 哲郎寺崎 秀則森岡 亨
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 20 巻 3 号 p. 1124-1128

詳細
抄録

麻疹肺炎により重症呼吸不全と意識障害を呈した1才の幼児に38日間の長期の体外式肺補助(Extracorporeal Lung Assist, ECLA)を行った。ECLAの間に長期体外循環管理、患者呼吸管理、及び治療上の多くの問題を経験した。VVからVA方式にバイパス方式を変更した。出血の増大にはヘパリンをnafamost at mesilate(FUT)にかえ血液凝固時間を短縮した。ECLA回路の閉塞による溶血はハプトグロビンにより治療した。人工肺や回路内の血栓形成、回路チューブの亀裂などのためそのつど回路を交換し、合計6基の人工肺を使用した。一方肺炎に対し、数々の内科的療法や理学療法を試みた。右胸腔内にできた血塊のため脱血不良でECLAによるガス交換補助ができなくなり患者の意識が低下し、すべての治療も無効と判断されたので39日目にECLAを中止した。本症例は救命にいたらなかったが、生命維持法としてのECLAの有効性を示すものである。

著者関連情報
© 一般社団法人 日本人工臓器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top