1991 年 20 巻 3 号 p. 829-834
補助心臓駆動下において補助停止時の循環動態を駆動したままで推定することが出来れば離脱時期の判断等のための血行動態の監視に有用であると考えられる。我々は時系列モデルで表現した平均補助流量と平均動脈圧、平均左房圧の関係をパラメータ同定で求め、補助流量が零のときの血圧の定常状態値を算出する手法を検討している。本研究では基礎検討としてコンピュータシミュレーションで動脈圧、左房圧の予測値と補助心臓停止後の真値を比較した。予測誤差値は左室収縮力が低下すると大きくなり、平均動脈圧の場合で約40mmHgに達したが、左房圧の上昇を考慮すると誤差は大幅に改善された。また、動脈圧、左房圧、補助流量の間の相互作用は同定を困難にする要因の一つで、補助流量を定値制御して影響を抑えた結果、左房圧の予測誤差がかなり軽減された。シミュレーションの段階では、本手法は予測可能と判断でき、さらに検討を進める予定である。