再弁置換術では凝固系の変動も大きいと考えられるため、1985年4月より再弁置換術を施行した20例(Redo群)と、初回弁置換を施行した連合弁膜症例(対照群)とについて術後早期の凝固系の変動を検討した。Redo群は対照群に比し体外循環時間に差はみられなかったが、手術時間は有意に長く(p<0.05)、出血量は軽度多い傾向を示した。Redo群では対象群に比較して、術後第1病日には血小板数、fibrinogen、antithrombinIIIは有意に低値を示し(p<0.05)、術前の抗凝血薬療法の影響でAPTT, PTの延長、TTの低下を認めたが(p<0.01)、第3病日以降は両群間に差は認められなかった。DIC score、DIC症例数にも両群間には差はみられなかった。再弁置換例における術前の抗凝血薬療法の影響と出血傾向は、術後早期に認められるのみであり、再弁置換例でも血栓塞栓症予防のため、術後可及的早期に抗凝血薬療法を施行すべきと考えられた。