抄録
肝細胞など接着依存性細胞を培養床から回収する方法として温度応答性表面を利用する新しい概念に基づいた培養システムを開発した。ポリイソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)を市販の組織培養皿表面に電子線照射によりグラフト重合した。PIPAAmは培養皿表面に均一にグラフトされ、ポリマーの厚さは約0.5μmであった。グラフト表面は、温度変化に応答して疎水性から親水性へと変化した。ラット肝細胞をグラフト表面で37℃で培養すると、細胞は市販の培養皿と同等に接着、増殖した。この細胞を培養皿のまま10℃に静置すると(低温処理)、全ての細胞が培養皿から剥離して回収できた。低温処理により回収した肝細胞の新しい培養皿への接着性、およびアルブミン分泌能は初代肝細胞とほぼ同じであったが、通常の酵素処理により回収した細胞では接着率、アルブミン分泌能ともに大きく低下していた。本培養システムによりラット肝細胞を温度を下げるという簡単な操作だけで機能を保持したまま回収出来ることを明らかにした。