人工臓器
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両性電解質型ポリアミノ酸と初代培養肝細胞との相互作用
藤本 幸之進近藤 慶之武井 由香戸辺 成四郎赤池 敏宏
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1992 年 21 巻 1 号 p. 212-216

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抄録

肝機能補助装置やバイオリアクターの開発に際して、肝実質細胞(肝細胞)の接着培養基材を開発することは非常に重要である。肝細胞とコラーゲンやフィブロネクチンなどとのレセプターを介した特異的相互作用においても、その結合の安定性、選択性には分子が有するペプチド結合、コンフォメーションおよび荷電性のアミノ酸残基等が重要な働きをしているものと考えられる。そこで我々は、生物特異的な認識をシミュレ-トするために、リシン、グルタミン酸およびロイシンからなる3成分ランダムコポリマーを合成し、これらのコポリマーに対するラット肝細胞の培養初期における挙動を解析した。その結果、リシンを多く含むコポリマーにおいては高接着性を示し、2.5% Fetal Calf Serum (FCS)、インスリン、デキサメタゾンを含む系で培養した場合、コラーゲンと同程度の機能発現性を有していた。また、上記の系で培養を続けると培養2-3日で多層島状集合体を経て、スフェロイドを形成した。このように高接着性、高機能発現性を示し、スフェロイドを形成することのできるアミノ酸コポリマーは肝機能補助装置などを開発する上で有用な基材になりうると考えられる。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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