抄録
最近3年間に遠心ポンプによる左心バイパス下に胸部下行大動脈瘤の人工血管置換術を12例(破裂例3例)行った。左心バイパス方法は脱血は左房10例、上行大動脈1例、左鎖骨下動脈1例で、送血はいずれも左大腿動脈であつた。手術成績は病院死2例(17%)で、1例は破裂例であつた。左鎖骨下動脈と左内頸動脈との間で大動脈遮断を行った3例中1例に術中脳塞栓を合併した。遠位弓部に病変が及ぶ真性瘤は、左心バイパスでは手術に限界があつた。術後のビリルビン上昇例4例の術中の大動脈遮断時間、バイパス流量は、肝機能正常群と変りなかつた。長時間大動脈遮断中の血中ケトン体比は大腿動脈血圧と相関して低下したが、遮断解除後は正常に復した。術後腎機能に影響を与えるのは腎血流の遮断であつた。胸部下行大動脈瘤手術では、遠心ポンプによる左心バイパス法は簡易で安全な補助手段と思われた。