1992 年 21 巻 2 号 p. 606-610
X線シネフィルムを用いて、大動脈弁位CarboMedics (CM)弁7例の運動を非同期的運動を中心に定量的に解析した。開放角度の計測には既に開発したコンピュータ画像処理システムを用いた。計測の結果、開放角度は心室中隔に対して左側の弁葉が平均71.1度、右側で74.7度であり、全例に非同期的運動が見られた。ブロッケンブロウ法による圧較差の測定結果からは、角度差と圧較差の間には相関関係は認められず、溶血等の機能不全との関連性も見いだせなかった。そこでin vivo及びin vitroの弁運動を比較するべく、拍動流モック回路下で高速CCDカメラを用いたCM弁の運動計測を行った結果、弁開放運動時または閉鎖運動時に非同期的運動を確認した。人工弁移植後の運動機能に関しては不明瞭な点も多く、本法によるin vivo及びin vitroの弁運動の比較相関は、臨床上の問題に対し合理的な説明を与えると共に人工弁の流体力学的性能の改良に寄与すると考えられた。